
「勉強したのにテストで思い出せない」「何度読んでも覚えられない」。そんな悩みはありませんか?



大切なのは、見るだけでなく「自分の頭で思い出すこと」。これがアクティブリコールです。
本記事では、その仕組み、英語・数学・国語・理科・社会での活用法を、中高生にもわかりやすく紹介します。今日からできる実践方法も解説します。
アクティブリコールって何?


「見ればわかる」と「自分で思い出せる」は違う
「この英単語、見たことがある。意味もわかる」
そう思っていたのに、テストでその英単語が出てきたら、意味が思い出せなかった。そんな経験はありませんか。
たとえば、英単語の「environment」を勉強したとします。英単語帳に「environment=環境」と書いてあれば、「ああ、環境という意味だ」と答えられます。しかし、英単語を隠して「『環境』は英語で何と言いますか?」と聞かれると、「えーっと……environment?」と自信がなくなることがあります。
これは、勉強していないということではありません。「見ればわかる」という状態と、「何も見ないで自分で思い出せる」という状態には違いがあるからです。
社会の勉強でも同じです。
教科書に「鎌倉幕府を開いたのは源頼朝」と書いてあれば、「そうだった」と確認できます。ところが、教科書を閉じて「鎌倉幕府を開いた人物は誰ですか?」と聞かれると、すぐには答えられないことがあります。
理科でも、「光合成」という言葉を教科書で見れば知っていると思っていても、「光合成とはどのようなはたらきですか?」と何も見ずに説明するのは難しいかもしれません。
ここで大切なのは、「見たことがある」と「自分で取り出せる」は同じではないということです。
勉強では、教科書やノートを見て「わかった」と感じるだけでなく、実際に何も見ないで思い出せるかを確かめることが重要になります。
そこで役立つのが、これから紹介する「アクティブリコール」です。
アクティブリコールとは?
アクティブリコール(Active Recall)は、簡単にいうと、勉強したことを、答えや教科書を見ずに、自分の頭から積極的に思い出す学習方法です。
「active」は「積極的な」、「recall」は「思い出す、想起する」という意味です。つまり、言葉の意味から考えても、「積極的に思い出す」という学習方法だと考えることができます。
たとえば、社会で「日本国憲法の基本原理」を勉強したとします。
教科書を読んだ後に、もう一度同じページを読むのではなく、教科書を閉じて、
「日本国憲法の基本原理には何があったかな?」
と自分に質問してみます。
そして、「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義」と思い出してみます。これがアクティブリコールです。
英単語なら、「重要な」という日本語を見て、
「英語では何だったかな?」
と考えます。
数学なら、公式を見ながら覚えるだけではなく、
「この問題を解くときに使う公式は何だったかな?」
と考えます。
理科なら、
「植物が光合成をするときに必要なものは何だったかな?」
と自分に問いかけます。
このように、アクティブリコールでは、単に教材を読み返すのではなく、一度教材から目を離して、自分の記憶を使って答えを取り出そうとします。
ここで大切なのは、「思い出せたかどうか」だけではありません。「思い出そうとすること」そのものが、アクティブリコールの中心です。
もちろん、最初からすべて思い出せなくても問題ありません。
たとえば、「日本国憲法の基本原理は……国民主権と……あと何だっけ?」となったとしても、そこで教科書を確認すればよいのです。
むしろ、思い出せなかった部分が見つかることで、「自分はここをまだ覚えていない」ということがわかります。
つまり、アクティブリコールは、覚えているかどうかを自分で確かめながら、思い出す練習をする方法なのです。
「読む勉強」から「思い出す勉強」へ
勉強というと、「教科書を読む」「ノートを見返す」「重要なところにマーカーを引く」といった方法を思い浮かべる人が多いでしょう。
これらの方法がすべて悪いわけではありません。新しい内容を理解するときには、教科書を読んだり、先生の説明を聞いたりすることが必要です。知らないことを知るためには、まず情報に触れなければなりません。
ただし、読むことだけを繰り返していると、「覚えたつもり」になってしまうことがあります。
たとえば、英単語を10回見ながら、「important、important、important……」と確認したとします。そのときには、「もう覚えた」と感じるかもしれません。
そこで英単語を隠して、
「『重要な』は英語で?」
と自分に質問してみます。
すると、意外と思い出せないことがあります。
この違いを確認するために、勉強の途中や最後に、「教材を見る時間」と「教材を見ないで思い出す時間」の両方をつくることが大切です。
たとえば、社会を30分勉強するとします。
最初の20分は教科書を読んで内容を理解します。そして最後の10分は教科書を閉じて、「今日勉強した内容は何だったか」「重要な人物は誰だったか」「なぜこの出来事が起こったのか」などを思い出します。
このように考えると、アクティブリコールは「読む勉強をやめる方法」ではありません。
「読む・理解する」だけで終わらず、「思い出す」という段階を加える方法なのです。
特に、テストで必要になるのは、教科書を見て答えを確認する力ではなく、問題を見たときに自分の記憶から必要な知識を取り出す力です。そのため、普段の勉強でも「思い出す練習」を取り入れる意味があります。
こんな勉強がアクティブリコール
アクティブリコールは、特別な教材がなければできない勉強法ではありません。普段の勉強を少し変えるだけでも実践できます。
一番簡単なのは、教科書を閉じて、自分に質問する方法です。
たとえば、理科を勉強した後に、
「今日勉強した内容を3つ挙げるとしたら何だろう?」
「この現象が起こる理由は何だろう?」
と考えます。
次に、白紙に思い出したことを書き出す方法があります。社会の歴史を勉強した後なら、教科書を閉じて、覚えている人物名、出来事、年代、関係などを書き出してみます。書いた後で教科書と比べれば、自分の記憶に抜けている部分が見つかります。
また、声に出して説明する方法もあります。
「光合成とは何か」「なぜ季節によって昼の長さが変わるのか」などを、先生になったつもりで自分の言葉で説明してみます。途中で説明できなくなったところがあれば、そこが復習するポイントです。
さらに、問題集や一問一答を使う方法もあります。問題を見たらすぐに答えを見るのではなく、まず自分で答えを思い出します。そして答え合わせをして、間違っていたところを確認します。
このように考えると、アクティブリコールは特別な「新しい勉強法」というより、普段の勉強に「思い出す」という行動を意識的に加える方法だとわかります。
大切なのは、「たくさん読んだから覚えたはず」と考えるだけで終わらず、実際に教材を閉じて、
「自分は何を覚えているだろう?」
と確かめてみることです。
それが、アクティブリコールの基本です。
なぜ「思い出す」と勉強になるの?
前の章では、アクティブリコールとは「勉強したことを、答えを見ずに自分の頭から思い出す学習方法」だと説明しました。
では、なぜ「思い出す」ことが勉強になるのでしょうか。
「覚える」というと、教科書を何度も読んだり、ノートを見返したりして、知識を頭の中に入れることをイメージしやすいと思います。しかし、勉強で本当に必要なのは、知識を入れることだけではありません。テストで問題が出たときに、その知識を自分の頭から取り出して使えることも必要です。
この章では、アクティブリコールを理解するうえで重要な「検索練習」と「テスト効果」という言葉を紹介しながら、「思い出すこと」がなぜ学習につながるのかを見ていきましょう。
記憶は「入れる」だけではなく「取り出す」ことが大切
勉強では、「知識を頭に入れること」が大切だと考えがちです。
たとえば、英単語を覚えるときには、英単語と日本語の意味を何度も見ます。社会なら教科書を読んで歴史上の人物や出来事を覚えます。理科なら用語や仕組みを確認します。
これは、学習の大切な部分です。知らないことを知るためには、まず情報に触れ、内容を理解する必要があります。
しかし、それだけでは十分ではありません。
たとえば、英単語の「environment」という単語を勉強したとします。英単語帳に「environment=環境」と書かれているのを見れば、「そうだった」と確認できます。
ところが、テストで、
「『環境』を英語で書きなさい」
と出題されたらどうでしょうか。
「environmentだったかな……」
と迷ってしまうかもしれません。
ここには、「知識を見たときにわかること」と「必要なときに自分で取り出せること」の違いがあります。
社会でも同じです。「鎌倉幕府を開いたのは源頼朝」と教科書に書いてあれば確認できます。しかし、教科書を閉じて「鎌倉幕府を開いた人物は誰ですか?」と聞かれたとき、すぐに「源頼朝」と答えられるとは限りません。
つまり、勉強では、
「頭の中に知識を入れる」
だけでなく、
「必要なときに、その知識を頭から取り出す」
ことも重要なのです。


そして、この「取り出す」という行為を実際に行うのが、アクティブリコールです。
たとえば、教科書を閉じて「今日の授業で何を習った?」と考えたり、問題集の問題を見て答えを思い出したりします。思い出すことによって、自分の記憶を実際に使ってみるのです。
これは、テスト本番の状況にも近いものです。テストでは、教科書を見ながら答えることはできません。問題を読み、必要な知識を自分の記憶から取り出して答えます。
だからこそ、普段の勉強でも「覚える時間」だけでなく、「思い出す時間」をつくることに意味があります。
「検索練習(Retrieval Practice)」とは?
アクティブリコールについて調べていくと、「検索練習(retrieval practice)」という言葉がよく登場します。
ここでいう「検索」は、Googleなどを使ってインターネット上の情報を探すことではありません。
心理学や学習科学でいう「検索」は、自分の記憶の中から、必要な情報を取り出すことを指します。
たとえば、
「日本の首都はどこですか?」
と聞かれて、
「東京です」
と答えるとします。
このとき、インターネットで「日本の首都」と検索しているわけではありません。自分の記憶から「東京」という知識を取り出しています。
これが、記憶の「検索」です。
そして、このように記憶から情報を取り出すことを、学習のために繰り返し行うことを「検索練習」と呼びます。


英単語なら、
「『重要な』は英語で何だろう?」
と考えて「important」と答える。
社会なら、
「大化の改新とは何だった?」
と考えて、自分の知っている内容を説明する。
理科なら、
「水が100℃で沸騰するのはなぜ?」
と考えて、学習した内容を説明する。
数学なら、
「このタイプの問題では、まず何を求めればよい?」
と考えて、解き方を思い出す。
これらはすべて、記憶から必要な知識を取り出す練習です。
検索練習のポイントは、「答えを見ること」ではなく、答えを見る前に、自分の記憶から答えを取り出そうとすることです。


たとえば、英単語を覚えるとき、「important」という文字を何度も見るだけではなく、「重要な」という日本語を見て「important」と答えてみます。
もし答えられなかったら、答えを確認します。そして、もう一度隠して、改めて「『重要な』は英語で?」と自分に問いかけます。
このように、「思い出そうとする→答えを確認する→もう一度思い出す」という学習を行います。
検索練習は、特別な教材を必要とするものではありません。問題集、一問一答、単語カード、自分で作った質問など、さまざまなものを使って実践できます。
アクティブリコールと検索練習の関係
ここで、「アクティブリコール」と「検索練習」はどう違うのかを整理しておきます。
この2つは非常に近い考え方です。
一般的な勉強法として説明するときには、「勉強したことを積極的に思い出す方法」としてアクティブリコールという言葉が使われます。
一方、心理学や学習科学では、学習した情報を記憶から取り出すことを繰り返す学習について研究するときに検索練習という言葉が使われます。
そこで、この記事では、
- アクティブリコール=一般的・教育的に使われる「思い出す勉強」
- 検索練習=学習科学などで研究されている「記憶から取り出す練習」
と整理しておきます。


厳密に両者を完全に同じ意味の言葉として扱う必要はありません。
どちらも「学習した内容を自分の記憶から取り出す」という点で強く関係しているということを理解しておけば良いでしょう。
「テスト」は成績を測るだけじゃない
「テスト」と聞くと、多くの人は定期テストや模試を思い浮かべるでしょう。
そして、テストの目的は「自分の成績や理解度を測ること」だと考えるかもしれません。
もちろん、成績や理解度を確認することは学校のテストの重要な役割です。
しかし、学習という視点から見ると、テストにはもう一つ重要な側面があります。
それは、テストを受けるように問題に答えること自体が、学習につながる場合があるということです。
たとえば、社会の用語を勉強するとき、教科書を何度も読み返すだけではなく、問題を見て、
「この人物は誰だった?」
「この出来事はなぜ起こった?」
と考えて答える方法があります。
このとき、生徒は自分の記憶から知識を取り出しています。
つまり、テスト形式の問題は、「覚えているかどうかを調べる道具」であるだけでなく、思い出す練習をする道具としても使えるのです。


ここで大切なのは、「テストを受ければ何でもよい」という意味ではないことです。
学習として重要なのは、問題を見て、自分の記憶から答えを取り出そうとすることです。そして、答え合わせをして、間違いがあれば正しい内容を確認することも大切です。
「テスト効果」とは?
ここで、もう一つ重要な言葉が登場します。
それがテスト効果(testing effect)です。
テスト効果とは、簡単にいうと、学習した内容についてテストなどを行い、記憶から答えを取り出すことによって、その後の記憶が促進される現象です。
つまり、テストには「覚えているかどうかを確認する」という役割だけではなく、「その後も覚えていられるようにする」という学習上の役割があるということです。


たとえば、社会の歴史を勉強した後に、教科書を何度も読み返す方法と、教科書を閉じて問題に答える方法を考えてみましょう。
どちらも勉強した直後には、ある程度覚えているかもしれません。
しかし、勉強した直後の「覚えている感じ」だけでは、後になってどれくらい思い出せるかは判断できません。
そこで、時間を空けてもう一度問題を解いてみます。
「鎌倉幕府を開いた人物は?」
「大日本帝国憲法が発布されたのは何年?」
「江戸幕府を開いた人物は?」
などの問題に答えることで、以前に学習した知識をもう一度記憶から取り出します。
このような検索・テストを学習の中に取り入れることで、後の記憶が促進されることが研究されています。
ただし、テスト効果を「問題を解けば必ず成績が上がる」という単純な法則として理解するのは適切ではありません。学習内容を理解すること、適切な問題に取り組むこと、答え合わせをして誤りを修正することなども重要です。
そのため、テスト効果は「テストだけをやればよい」という話ではありません。
むしろ、
「覚えた内容を、実際に思い出してみることにも学習上の価値がある」
という点が重要なのです。
3つの言葉を整理しよう
ここまでの内容を整理すると、次のようになります。
アクティブリコールは、勉強したことを答えを見ずに思い出す「勉強方法」です。
検索練習は、学習した知識を記憶から取り出すことを繰り返す「練習方法」です。
テスト効果は、そのようなテストや検索による取り出しによって、その後の記憶が促進される「現象」です。
この3つは、それぞれ別々のものというより、互いに深く関係しています。


今日からできる!アクティブリコール基本実践法
ここまで、アクティブリコールとは何か、そして「思い出す」という行為が学習にどのように関係しているのかを説明してきました。
では、実際の勉強ではどのように使えばよいのでしょうか。
アクティブリコールは、特別な教材や高価な道具が必要な勉強法ではありません。教科書やノート、問題集、白い紙など、普段使っているものを利用して始めることができます。
大切なのは、勉強した内容を「見て確認する」だけで終わらせず、途中で教材から目を離して、「自分は何を覚えているだろう?」と確かめることです。
この章では、中学生や高校生が今日から実践できる、基本的なアクティブリコールの方法を紹介します。
まずは「教科書を閉じる」ことから始めよう
アクティブリコールを始めるとき、最も簡単なのは、勉強した後に教科書やノートを閉じることです。
「そんなことで勉強になるの?」と思うかもしれません。
しかし、ここには大切な意味があります。
教科書を開いたままでは、答えが目の前にあります。たとえば、社会の教科書に「鎌倉幕府を開いたのは源頼朝」と書いてあれば、それを見て「源頼朝だった」と確認できます。
そこで、一度教科書を閉じます。
そして、
「鎌倉幕府を開いた人物は誰だった?」
と考えてみます。
「源頼朝」と思い出せたら、それがアクティブリコールです。
思い出せなかったとしても問題ありません。もう一度教科書を開いて確認すればよいのです。
大切なのは、答えを見る前に、自分の記憶から取り出そうとする時間をつくることです。


たとえば、数学なら例題を読んだ後に解答を隠して、「この問題はどうやって解くのだったかな?」と考えます。
英語なら、単語を覚えた後に単語帳を閉じて、「この日本語は英語で何だったかな?」と考えます。
理科なら、教科書を閉じて「なぜこの現象が起こるのだろう?」と説明してみます。
最初は、勉強時間の最後の3分からでも十分です。
「勉強したら、最後に教科書を閉じる」
この小さな習慣から始めてみましょう。
「今日何を勉強した?」と自分に質問する
教科書を閉じたら、次にやってほしいのが自分自身に質問することです。
アクティブリコールでは、「何を思い出すか」が重要になります。そのため、ただ「思い出そう」とするだけでなく、自分に具体的な質問をすると取り組みやすくなります。
まずは、
「今日、何を勉強した?」
という質問から始めてみましょう。
たとえば、社会で江戸時代を勉強したとします。
教科書を閉じて、
「今日勉強した人物は誰だった?」
「どんな出来事があった?」
「その出来事はなぜ起こった?」
と、自分に質問してみます。
英語なら、
「今日覚えた単語を5つ言える?」
「この文法はどんなときに使う?」
「この英文はどんな意味だった?」
と質問できます。
理科なら、
「今日の重要な用語は何?」
「この現象はなぜ起こる?」
「実験では何を調べた?」
と考えます。
数学では、単に公式を思い出すだけでなく、
「今日習った公式は何?」
「この公式はどんな問題で使う?」
「この問題を解くとき、最初に何をすればよい?」
と質問することができます。
特におすすめなのは、「何を?」「なぜ?」「どのように?」の3種類の質問を使うことです。
「何を?」は知識を思い出すための質問です。
「なぜ?」は理由や原因を思い出すための質問です。
「どのように?」は仕組みや手順を思い出すための質問です。


たとえば、理科で「蒸発」を勉強したなら、
「蒸発とは何?」
だけでなく、
「水はなぜ蒸発する?」
「蒸発するとき、水はどのように変化する?」
と質問できます。
こうすると、単語を思い出すだけでなく、その言葉の意味や仕組みまで思い出す練習になります。
ただし、最初から難しい質問をたくさん作る必要はありません。
まずは、
「今日何を勉強した?」
「重要なことを3つ挙げるとしたら?」
という簡単な質問から始めるとよいでしょう。
思い出したことを白紙に書いてみる
アクティブリコールでは、頭の中だけで思い出す方法もありますが、実際に紙に書き出す方法もあります。
用意するものは、白い紙と筆記用具だけです。
たとえば、歴史の「江戸時代」を30分勉強したとします。
勉強が終わったら教科書を閉じます。そして白紙に、
「江戸時代について覚えていること」
と書き、思い出せる内容を自由に書いてみます。
徳川家康、江戸幕府、参勤交代、鎖国、身分制度など、思いついたことを書きます。
ここで重要なのは、教科書を見ながら写さないことです。
「覚えていることを、自分の記憶から書き出す」というところに意味があります。
書き終わったら教科書を開いて、確認します。
「参勤交代は書けたけれど、その目的を説明できていなかった」
「鎖国については覚えていたけれど、具体的な内容が足りなかった」
というように、自分の記憶の状態が見えてきます。
この方法は、いわゆる「白紙法」と呼ばれることがあります。ただし、白紙法という名前にこだわる必要はありません。大切なのは、何も見ない状態で学習内容を自分から書き出すことです。


数学でも使えます。
たとえば、1次関数を勉強した後なら、
「1次関数について覚えていること」
と紙に書き、
「」
という式や、「 は傾き」「 は切片」といった知識を書き出します。
さらに、「グラフはどのようになるか」「傾きが変わるとどうなるか」なども書いてみます。
英語なら、今日覚えた単語や文法を思い出して書きます。
理科なら、実験の目的、方法、結果、理由などを思い出して書き出します。
書き出す方法のよいところは、自分がどこまで思い出せたのかを目で確認できることです。
「わかったつもり」だった部分が、はっきり見えてくることもあります。
ただし、白紙をきれいに埋めることが目的ではありません。大切なのは、思い出すことです。
声に出して説明してみる
もう一つ簡単な方法が、勉強した内容を自分の言葉で説明することです。
「人に教えるつもり」で説明してみると、思い出せている部分と、理解があいまいな部分を見つけやすくなります。
たとえば、理科で「光合成」を勉強したとします。
教科書を閉じて、
「光合成とは何か説明してください」
と自分に問いかけます。
そして、
「植物が光のエネルギーを利用して、二酸化炭素と水から養分をつくるはたらきです」
など、自分が学習した内容を説明してみます。
途中で、
「二酸化炭素はどこから取り込むんだっけ?」
「酸素はどうなるんだっけ?」
と説明できなくなったら、そこが確認するポイントです。


数学でも、
「なぜこの公式を使うのか?」
「この問題はどういう順番で解いたのか?」
を説明してみます。
英語なら、
「現在完了はどんな意味を表すのか?」
「この文ではなぜこの形になるのか?」
と説明します。
説明するときは、難しい言葉を使う必要はありません。
むしろ、自分が理解している言葉で説明できるかが大切です。
ただし、「説明できたから完全に理解している」と決めつけることは適切ではありません。説明した後に教科書や先生の説明と照らし合わせることで、誤解や不足している部分を確認しましょう。
問題集を「検索練習」として使う
普段使っている問題集も、アクティブリコールのための道具になります。
ポイントは、問題を見たら、まず自分で答えを考えることです。
たとえば、社会の一問一答で、
「江戸幕府を開いた人物は?」
という問題が出たとします。
すぐに答えを見るのではなく、
「徳川……家康」
と自分の記憶から答えを取り出します。
答えられたら、答え合わせをします。
英単語なら、
「『必要な』を英語で書きなさい」
という問題を見て、自分で答えを書きます。
数学なら、問題を読んで、
「この問題はどの公式を使うのだろう?」
「まず何を求めればよい?」
と考えてから解き始めます。
ここで重要なのは、問題集を単なる「正解数を競う道具」にしないことです。
たとえば20問解いて18問正解したとしても、「18問できた」で終わらせるのではなく、「2問はなぜできなかったのか」を確認します。
また、問題を解いている途中で、
「この問題、前にやったけれど解き方が思い出せない」
ということもあります。
それも重要な情報です。
問題集は、自分が「何を覚えているか」「何を思い出せないか」を確認するために使えます。
特に一問一答形式の問題集は、検索練習を行いやすい教材です。
ただし、すべての問題を何度も同じ順番で解く必要はありません。できる問題とできない問題を区別しながら、必要なところを重点的に復習するとよいでしょう。


答え合わせまでがアクティブリコール
アクティブリコールでは、「思い出して答える」ことだけに注目しがちですが、答え合わせも非常に重要です。
基本的な流れは、
思い出す → 答える → 答え合わせ → 間違いを修正する
です。


たとえば、社会の問題で、
「明治維新が始まったのは何年?」
と聞かれて、「1867年」と答えたとします。
答えが違っていたら、「間違えたから失敗」と考えるのではなく、正しい答えを確認します。
ここで、
「1868年だった」
と修正します。
さらに、なぜ間違えたのかを考えることもできます。
「1867年は大政奉還の年と混同していた」
とわかれば、単に答えを覚え直すだけでなく、混同していた知識を整理できます。
英単語でも同じです。
「『環境』=environment」を思い出そうとして「environmental」と答えてしまったなら、答えを確認して、両者の違いを整理します。
数学なら、答えが違ったときに、単に正解の式を写すだけではなく、
「どの段階で間違えたのか」
を確認します。
ここで大切なのは、間違った答えを覚えたままにしないことです。
アクティブリコールは、「何も見ないで答えること」だけが目的ではありません。
自分の記憶を取り出してみる。そして答えと比べる。違っていたら正しい知識に修正する。
この一連の流れによって、自分の理解や記憶の状態を確認できます。
だからこそ、
「思い出せなかったからダメだった」
ではなく、
「思い出せなかったところを発見できた」
と考えることが大切です。
「思い出せなかった問題」をもう一度やる
アクティブリコールを行っていると、思い出せない問題が出てきます。
たとえば、英単語を20個確認して、15個は答えられたけれど、5個は思い出せなかったとします。
この5個をそのままにしてはいけません。
まず答えを確認します。
そして、少し時間を置いてから、もう一度問題を出してみます。
「『環境』は英語で?」
「『必要な』は英語で?」
というように、再び答えを思い出します。
数学なら、間違えた問題の解答を確認した後、すぐに答えを写すだけで終わらせず、もう一度問題を見て、自分で解いてみます。
社会なら、忘れていた人物名を確認した後、少し時間を空けて、
「この人物は何をした人だった?」
と再び思い出します。
ここで、「思い出せなかった問題だけを永遠に繰り返す」という必要はありません。
重要なのは、一度答えを確認したら、もう一度自分の力で思い出す機会をつくることです。
さらに、翌日や数日後にもう一度確認すれば、時間を空けた復習にもつながります。
このように考えると、間違いは「勉強の失敗」ではありません。
むしろ、自分がまだ十分に覚えていない場所を教えてくれる目印になります。


5分でできるアクティブリコール
「アクティブリコールをやってみたいけれど、勉強時間があまりない」という人は、まず5分から始めてみましょう。


たとえば、30分間英語を勉強したとします。
最後の5分だけ教材を閉じます。
最初の1分で、今日勉強した内容を思い出します。
次の2分で、英単語や文法を何も見ずに思い出します。
残りの2分で教科書や単語帳を開き、答えを確認します。
社会や理科なら、「今日覚えた重要なことを3つ説明する」という方法でも構いません。
数学なら、「今日解いた問題の解き方を説明する」という方法があります。
重要なのは、長時間やることではありません。
まずは毎日の勉強の最後に、「教材を閉じて思い出す時間」を数分つくることです。
慣れてきたら、5分から10分、10分から15分というように、自分の勉強に合わせて調整すればよいでしょう。
アクティブリコールは、特別な勉強時間を新しく大量に確保しなければできない方法ではありません。普段の勉強の中に、「思い出す」という一つの行動を加えるだけでも始められます。
まずは今日の勉強が終わったときに、教科書を閉じてみてください。
そして、自分にこう問いかけてみましょう。
「今日、何を勉強した?」
そこから思い出す練習が始まります。
教科別!アクティブリコール実践術
アクティブリコールは、どの教科にも同じ方法で使えばよいわけではありません。
英語なら英単語や文法、数学なら公式や解法、国語なら文章の内容、理科なら用語や仕組み、社会なら人物や出来事など、教科によって「思い出すべきもの」が違います。
そこで大切なのは、「すべての教科で同じことをする」のではなく、その教科で実際に問題を解くときに必要になる知識や考え方を思い出すことです。


たとえば、英語では「日本語を見て英単語を思い出す」、数学では「問題を見て使う方法を思い出す」、社会では「人物・出来事・理由を関連づけて思い出す」といった違いがあります。
この章では、主要な教科ごとにアクティブリコールをどのように使えばよいのか、具体例を挙げながら説明します。
英語――英単語を「見ないで言える」にする
英語でアクティブリコールを使いやすい代表的な分野が、英単語です。
英単語を覚えるとき、多くの人は単語帳を何度も見ます。
たとえば、
「environment=環境」
と書かれているのを見て、「environmentは環境」と確認します。
しかし、学校のテストや入試では、単語帳を見ながら答えることはできません。問題を見て、自分の記憶から必要な単語を取り出す必要があります。
そこで、単語を覚えたら、今度は答えを隠して思い出す練習をします。
たとえば、日本語の「環境」を見て、
「英語では何だった?」
と考えます。
「environment」
と思い出せたら、答えを確認します。
反対向きの練習もできます。
「environment」
を見て、
「日本語では何だった?」
と考えます。
このように、「日本語→英語」と「英語→日本語」の両方から思い出してみると、単語を一方向だけで覚えるよりも、さまざまな場面で知識を取り出す練習になります。
さらに、単語を「意味だけ」で覚えず、実際の使い方まで思い出す方法もあります。
たとえば「important」という単語なら、
「importantの意味は?」
だけでなく、
「importantを使った表現にはどんなものがあった?」
「importantの後にはどんな形が続くことがある?」
など、自分が学習した範囲で問いかけます。
ただし、最初から一つの単語について大量の質問をする必要はありません。
まずは、
「日本語を見て英語を言う」
というシンプルな方法から始めましょう。
そして、答えられなかった単語を確認し、少し時間を置いてもう一度思い出します。
英単語では、「見ればわかる」状態から一歩進んで、「何も見なくても取り出せる」状態をつくることがポイントです。
英語――文法を「説明できる」にする
英語の文法では、正解を覚えるだけでなく、「なぜその答えになるのか」を説明する練習ができます。
たとえば、ある英文の空欄に「was」が入る問題を解いたとします。
正解を確認して「wasだった」と覚えるだけでなく、
「なぜwasになるのだろう?」
と自分に問いかけます。
「主語が三人称単数だから?」
「過去のことを表しているから?」
「受け身の形だから?」
など、問題に応じて理由を考えます。
もちろん、正確な理由は文法事項によって異なります。大切なのは、単に「答えはwas」と覚えるのではなく、答えを導くために必要なルールを思い出すことです。
たとえば、現在完了を学習したなら、
「現在完了にはどのような用法がある?」
「この文ではなぜ現在完了が使われている?」
と説明してみます。
もし説明できなければ、教科書や授業ノートに戻って確認します。
そして、もう一度教材を閉じて説明してみます。


この方法を使うと、文法問題を「正解を覚える作業」から、「ルールを思い出して問題に使う練習」へ変えることができます。
4.3 数学――公式を思い出す
数学でもアクティブリコールを活用できます。
ただし、数学では「公式を全部暗記すればよい」と考えないことが大切です。
たとえば、円の面積を求める公式として、
「円の面積=×半径×半径」
を学習したとします。
公式を見ながら、「円の面積は 」と確認するだけで終わらせるのではなく、教材を閉じて、
「円の面積の公式は?」
と自分に質問します。
さらに、
「半径が5cmならどうなる?」
「直径しかわからない場合はどうする?」
と考えてみます。
このようにすると、公式そのものだけでなく、公式を使うための条件も意識できます。
また、
「この公式はいつ使う?」
という質問も重要です。
たとえば、三角形の面積の公式を覚えていても、問題を見たときにどの情報を使えばよいのかわからなければ、実際の問題には活用できません。
そこで、
「三角形の面積を求めるには何が必要?」
「底辺と高さはどこ?」
と考えます。
さらに一歩進めるなら、
「なぜこの公式になるのだろう?」
と考えることもできます。
ただし、公式の導き方まで毎回すべて思い出す必要があるわけではありません。学習段階に応じて、まず公式を思い出し、次に「いつ使うか」を思い出すというように進めるとよいでしょう。
数学では、「公式を知っている」だけでなく、「必要なときに公式を取り出して使える」ことが重要です。
数学――解き方を思い出す
数学では、公式だけでなく「問題を見たときに、どのように解き始めるか」を思い出す練習もできます。
たとえば、文章題を見たときに、
「この問題は、まず何を求めればよい?」
「どんな数量を文字で表せばよい?」
「どの関係を式にすればよい?」
と考えます。
すぐに解答を見るのではなく、まず自分で解き方を思い出してみます。


たとえば、1次方程式の文章題なら、
「何を と置けばよい?」
「問題文のどの関係から方程式をつくれる?」
と考えます。
関数の問題なら、
「この問題では何と何の関係を考える?」
「グラフのどの情報を使う?」
と考えます。
図形なら、
「どの公式が使える?」
「補助線を引く必要がある?」
「相似や合同が使えないだろうか?」
など、学習した解法を思い出します。
ここで大切なのは、問題を見てすぐ解答を見るのではなく、まず「解き方の方針」を自分で考えることです。
たとえば、難しい問題で最後まで解けなかったとしても、
「最初にこの式をつくるところまでは思い出せた」
なら、それも重要な検索練習になっています。
一方で、毎回まったく解き方が思い出せない場合は、まだその解法を十分に理解していない可能性があります。そのときは解説を確認し、なぜその方法を使うのかを理解してから、もう一度問題に取り組みます。
数学では、単純な「公式の暗記」よりも、問題を見たときに適切な知識や解法を取り出す練習が重要になります。
国語――文章の内容を思い出す
国語では、英単語のように「正解を一語で思い出す」だけではありません。
特に説明文や論説文では、文章の内容や筆者の主張を思い出して説明するという方法が使えます。
たとえば、文章を読んだ後に本文を閉じて、
「この文章は何について書かれていた?」
「筆者が一番伝えたかったことは何?」
「本文ではどのような理由が挙げられていた?」
と自分に質問します。
そして、自分の言葉で説明してみます。
たとえば、
「筆者は、便利な道具を使うこと自体が悪いのではなく、使い方を考えることが重要だと述べていた」
というように説明できれば、文章全体の内容を思い出す練習になります。
小説なら、
「主人公はどんな気持ちだった?」
「その気持ちは、どの出来事によって変化した?」
「物語の最後に主人公はどうなった?」
などと考えます。
国語では、一字一句を正確に暗記する必要はありません。
むしろ、文章の構造や重要な内容を自分の言葉で再現できるかを意識するとよいでしょう。


その後、本文に戻って、自分の説明に抜けていた部分や誤っていた部分を確認します。
理科――用語と仕組みを思い出す
理科では、用語を覚えるだけでなく、「なぜそうなるのか」「どのように起こるのか」まで思い出すことが重要です。
そこで、理科では、
「何?」
「なぜ?」
「どのように?」
という3種類の質問を使ってみましょう。
たとえば、「光合成」を学習したとします。
まず、
「光合成とは何?」
と質問します。
これは「何?」の質問です。
次に、
「植物はなぜ光合成をする?」
と考えます。
これは「なぜ?」の質問です。
さらに、
「光合成では、どのような物質が関係する?」
「どのような条件が必要?」
と考えます。
これは「どのように?」に関係する質問です。


物理なら、「電流とは何か」「なぜこの回路で電流が流れるのか」「どのように計算するのか」と問いかけます。
化学なら、「酸化とは何か」「なぜこの反応が起こるのか」「どのような物質が関係しているのか」と考えます。
生物なら、「この器官は何をするのか」「なぜその働きが必要なのか」「どのような仕組みで働くのか」と考えます。
地学なら、「この現象は何か」「なぜ起こるのか」「どのように変化するのか」と考えます。
理科では、用語だけを思い出して終わるのではなく、用語とその意味、理由、仕組みをつなげて思い出すことがポイントです。
たとえば「蒸発」という言葉を思い出せても、「液体の表面から気体になる現象」という意味を説明できなければ、理解が十分でない可能性があります。
思い出せなかったところは教科書で確認し、もう一度自分の言葉で説明してみましょう。
社会――「いつ・誰が・何を・なぜ」を思い出す
社会は、アクティブリコールと相性のよい教科の一つです。
特に歴史では、単語を一つずつ覚えるだけではなく、「いつ・誰が・何を・なぜ」という形で関連づけて思い出すと整理しやすくなります。
たとえば、「大政奉還」を勉強したとします。
「いつ?」
「誰が?」
「何をした?」
「なぜ?」
という質問を自分に投げかけます。
そして、学習した内容を思い出します。
人物についても、
「この人物は何をした?」
「この人物と関係する出来事は?」
と考えます。


地理なら、
「この地域では何が盛ん?」
「なぜこの産業が発達した?」
「どのような気候が関係している?」
といった質問ができます。
公民なら、
「国会にはどのような役割がある?」
「なぜ三権分立が必要?」
「この制度にはどのような目的がある?」
と問いかけます。
社会では、単に用語を見て「知っている」と感じるだけではなく、用語を見ないで意味や関連する情報を説明することが重要です。
たとえば「三権分立」という言葉を見て意味を確認するだけでなく、
「三つの権力とは?」
「それぞれを担当する機関は?」
「なぜ権力を分けるの?」
と順番に思い出していけば、知識同士のつながりを確認できます。
歴史・地理・公民のどの分野でも、「自分で質問をつくって、自分で答える」という方法を取り入れてみましょう。
定期テスト対策――テスト前の総復習に使う
定期テスト前には、アクティブリコールを「総復習」のために使うことができます。
おすすめなのは、問題集や学校のワークを使って、まず自分の力で答えてから答え合わせをすることです。
たとえば、社会のワークを30問解いたとします。
20問正解、10問不正解だったなら、「20問できた」で終わらせません。
10問について、
「なぜ思い出せなかったのか」
「単純に忘れていたのか」
「似た言葉と混同したのか」
「問題の意味を理解できていなかったのか」
を確認します。
そして、間違えた問題をもう一度解きます。


テスト前だからといって、教科書を最初から最後まで何度も読み直すだけにする必要はありません。
もちろん、全体を読み返して知識を整理することも必要です。そのうえで、問題を解いて、思い出せない部分を見つけ、そこを重点的に復習すると効率よく復習できます。
テスト前には、
「何を勉強したか」
ではなく、
「何を自力で答えられるか」
を確認する視点を持ってみましょう。
高校受験・大学受験――長期的な記憶に活用する
高校受験や大学受験では、テスト範囲が広くなるため、「一度覚えたら終わり」という勉強では対応しにくくなります。
そこで役立つのが、アクティブリコールと時間を空けた復習を組み合わせる方法です。


たとえば、月曜日に歴史の明治時代を勉強したとします。
その日の最後に、教科書を閉じて重要事項を思い出します。
そして、翌日にもう一度問題を解きます。
数日後には、別の単元と一緒に確認します。
さらに数週間後にも、問題を解いてみます。
このように、同じ知識を時間を空けながら思い出す機会をつくります。
英単語でも同じです。
月曜日に50語覚えたら、月曜日だけで何度も確認するのではなく、翌日、数日後、さらに後の日にも思い出してみます。
数学なら、以前習った単元の問題を定期的に解き、
「このタイプの問題はどう解く?」
と解法を思い出します。
受験勉強では、毎日新しい内容を進めるだけでなく、以前に勉強した内容を思い出す時間を定期的につくることが大切です。
ただし、すべての内容を同じ頻度で復習する必要はありません。よく覚えているものは間隔を広げ、忘れやすいものや間違えやすいものは早めにもう一度確認するなど、自分の状態に合わせて調整するとよいでしょう。
アクティブリコールは、受験勉強を特別な方法に変えるものではありません。
英単語なら「意味を見ないで言う」。
数学なら「解き方を見ないで考える」。
理科なら「用語や仕組みを説明する」。
社会なら「人物・出来事・理由を思い出す」。
国語なら「文章の内容や主張を説明する」。
このように、普段の勉強の中に「思い出す」という行動を組み込むだけでも、アクティブリコールを実践できます。
そして、受験のように長い期間にわたって学習する場合には、時間を空けながら何度も思い出すことが重要になります。
大切なのは、「どれだけ教材を見たか」だけで勉強の量を判断しないことです。
「教材を閉じたとき、自分は何を思い出せるだろうか」
「問題を見たとき、自分の力で答えを取り出せるだろうか」
と確認してみてください。
アクティブリコールは、この「自分の記憶から取り出す」という視点を、毎日の勉強に加えるための方法なのです。
もっと効果的にする!アクティブリコール応用術
ここまでに、教科書を閉じて思い出したり、白紙に書き出したり、問題集を使って答えたりする、アクティブリコールの基本的な方法を紹介しました。さらに英語、数学、国語、理科、社会など、教科ごとの活用方法も見てきました。
ここからは、基本的な方法をさらに一歩進めていきます。
アクティブリコールは、単に「思い出す」だけで終わらせる必要はありません。思い出した後に答えを確認し、もう一度思い出したり、時間を空けて復習したり、「なぜ?」と問いかけたりすることで、普段の勉強により組み込みやすくなります。
また、友達やAIなどを使って、問題を出し合うこともできます。
大切なのは、難しい勉強法を新しくたくさん覚えることではありません。「自分の頭から思い出す」という学習行動を、普段の勉強の中にどのように組み込むかです。


「思い出す→答え合わせ→もう一度思い出す」
アクティブリコールでは、「思い出して終わり」にしないことが大切です。
たとえば、英単語を10個勉強したとします。教科書や単語帳を閉じて、日本語を見ながら英単語を思い出してみます。
「これは思い出せた」
「これは思い出せない」
という違いが出てきます。
ここで答えを確認します。
たとえば、「環境」という日本語を見て「environment」が思い出せなかったとしましょう。答えを確認したら、「environmentだった」と納得して終わりにするのではなく、もう一度日本語だけを見て、英語を思い出してみます。
つまり、
思い出す → 答え合わせ → 間違いを修正 → もう一度思い出す
という流れにします。


数学でも同じです。問題を解いて間違えたら、解答を読んで終わりにするのではなく、解き方を確認した後、もう一度問題を見て、自分で解き直してみます。
ただし、すぐに答えを丸写しするのではありません。解説を確認して「なるほど」と理解した後、自分の力で再現することがポイントです。
このようにすると、答えを「見た記憶」ではなく、必要なときに自分で取り出す練習につなげることができます。
時間を空けて思い出す――分散学習との組み合わせ
アクティブリコールをさらに活用するなら、時間を空けて何度か思い出す方法(分散学習)を取り入れてみましょう。


一度勉強した内容を、その日のうちに何度も繰り返して確認するだけではなく、翌日、数日後、さらにその後というように、復習するタイミングを分けます。
たとえば、社会で「江戸時代」の学習をしたとします。
その日の勉強の最後に、教科書を閉じて、
「江戸幕府を開いた人物は?」
「どのような制度があった?」
「授業では何が重要だと言われていた?」
などを思い出します。
翌日には、前日の内容を問題形式で確認します。
さらに数日後には、別の単元を勉強する前に、もう一度思い出します。
そして、1週間ほどたったところで、問題集などを使って確認します。
イメージすると、
今日
↓
翌日
↓
数日後
↓
1週間後
という流れです。
もちろん、「必ず翌日、3日後、7日後に復習しなければならない」という決まった日程があるわけではありません。学習内容や自分の記憶の状態に合わせて調整すればよいでしょう。
たとえば、翌日の復習でほとんど答えられなかった内容なら、もう少し早く復習してもよいでしょう。反対に、何度か問題を解いて安定して答えられるようになった内容なら、復習の間隔を広げることもできます。
英単語なら、今日覚えた単語を明日確認し、その数日後にも確認します。
数学なら、今日解いた問題と似た問題を、数日後にもう一度解いてみます。
社会なら、歴史の出来事をその日に覚えるだけでなく、数日後に「この人物は何をした?」と問いかけてみます。
このように、時間を空けながら思い出す機会をつくることを意識しましょう。
「勉強した直後は答えられる」という状態だけではなく、「時間がたっても思い出せる」という状態を目指すことが大切です。
「簡単に思い出せる問題」と「難しい問題」を使い分ける
アクティブリコールでは、すべての問題を同じように繰り返す必要はありません。
たとえば英単語を50個勉強したとき、50個すべてを毎回同じ回数だけ確認するのではなく、自分の記憶の状態を見てみましょう。
「すぐに答えられる単語」
「少し考えれば答えられる単語」
「何度やっても思い出せない単語」
というように分けて考えることができます。
たとえば、「school=学校」はすぐに答えられるのに、「environment=環境」はなかなか出てこないとします。この場合、environmentのほうを重点的に確認します。
数学でも同じです。
「正負の数の計算はできるけれど、文章題になると式を作れない」という場合には、簡単な計算問題だけを繰り返すのではなく、文章から必要な情報を取り出して式を作る練習を増やします。
ここで大切なのは、難しい問題ばかりに挑戦すればよいわけでもないということです。
まずは基礎的な内容を確実に思い出せるようにし、そのうえで少し難しい問題にも取り組みます。
「何ができていて、何がまだ不安なのか」を確認しながら、問題の難しさを調整しましょう。


「なぜ?」「どうして?」を追加する
アクティブリコールに慣れてきたら、「何?」だけでなく、「なぜ?」や「どうして?」という質問を追加してみましょう。


たとえば社会で、
「江戸幕府を開いた人物は?」
と聞かれて、「徳川家康」と答えられたとします。
ここでさらに、
「徳川家康は、なぜ江戸に幕府を開いたのだろう?」
「江戸幕府はどのような仕組みで大名を統制したのだろう?」
と、学習した内容に応じて質問を増やします。
理科なら、
「光合成とは何?」
だけでなく、
「光合成には何が必要?」
「なぜ植物は光合成をする?」
と考えます。
数学なら、
「この公式は何?」
だけでなく、
「この問題では、なぜこの公式を使う?」
と考えます。
この方法を使うと、単語や公式を単独で覚えるだけではなく、知識と理由、知識と使い方を結びつけて思い出すことができます。
ただし、すべての内容について細かい理由を説明する必要はありません。
まずは、自分が「答えは覚えているけれど、理由は説明できない」と感じるところから始めてみましょう。
「自分で問題を作る」
教科書や参考書を読むだけでなく、自分で問題を作る方法もあります。
たとえば、社会の教科書に「参勤交代」という見出しがあったとします。
そこから、
「参勤交代とは何ですか?」
という問題を作れます。
さらに、
「参勤交代は何のために行われたのですか?」
という問題も作れます。
理科の「消化」という見出しなら、
「消化とは何ですか?」
「食物は体内でどのように変化しますか?」
などと質問できます。
英語なら、学習した文法を見て、
「この文法はどのような意味を表す?」
「どのような場合に使う?」
といった問題を作れます。
問題を作ったら、教科書を閉じて答えてみます。
ここで重要なのは、問題をたくさん作ることではありません。
「このページで一番重要なことは何だろう?」
と考えることです。
教科書の見出しや太字の言葉を手がかりにして、まず1~3問程度作ってみるだけでもよいでしょう。


友達とクイズを出し合う
アクティブリコールは、一人で行うだけではありません。友達とクイズを出し合う方法にも応用できます。


たとえば、社会のテスト前なら、
「鎌倉幕府を開いた人物は?」
「大政奉還とは何?」
と交互に問題を出します。
理科なら、
「この用語の意味を説明して」
「なぜこの現象が起こる?」
などの質問ができます。
友達から突然質問されると、自分が本当に思い出せるかを確認しやすくなります。
ただし、友達が言った答えをそのまま正解だと思い込まないことも大切です。
「たしかこうだったと思う」という回答が出た場合は、教科書や授業ノートなどで確認しましょう。
友達とのクイズは、楽しさを取り入れながら、記憶から知識を取り出す練習ができる方法として活用できます。
AIやデジタルツールを使ったアクティブリコール
AIやデジタルツールを使って、アクティブリコール用の問題を作ることもできます。
たとえば、
「中学2年生向けに、江戸時代の一問一答を10問作ってください」
とAIに依頼します。
英語なら、
「中学生向けの英単語問題を10問作ってください。日本語を見て英語を答える形式にしてください」
と依頼することもできます。
理科なら、
「中学理科の電流について、用語を答える問題と理由を説明する問題を作ってください」
という使い方ができます。
ただし、ここで非常に重要な注意があります。
AIが作った問題や答えを、そのまま正しいと考えてはいけません。
AIは便利な学習支援ツールですが、内容を誤って生成することがあります。そのため、AIが示した説明や答えについては、学校の教科書、授業ノート、先生から配られた教材などと照らし合わせて確認することが大切です。
また、
「この問題の答えを教えて」
とAIに聞いて、答えを読むだけでは、アクティブリコールにはなりません。
まず自分で答えてから、
「私の答えは○○です。正しいか確認してください」
と使うほうが、目的に合っています。
AIは「自分の代わりに考えてもらう道具」としてだけではなく、自分が思い出すための問題を作ってもらう道具として活用するとよいでしょう。
5.8 他の勉強法と組み合わせる
アクティブリコールは、ほかの勉強法と組み合わせることもできます。
たとえば、ポモドーロ・テクニックで25分間勉強する場合、その最後の数分をアクティブリコールにします。
最初の時間で教科書を読んだり問題を解いたりして、最後に教材を閉じます。
そして、
「今日何を勉強した?」
「重要なことは何?」
「まだ思い出せないことは何?」
と確認します。
また、時間を区切って学習計画を立てる方法と組み合わせて、「毎日の勉強の最後に5分間、前日の内容を思い出す」と決めることもできます。
このように考えると、アクティブリコールは「特別な勉強法をもう一つ追加する」というより、今やっている勉強の中に『思い出す時間』を組み込む方法だと考えることができます。


最初から完璧な学習システムを作る必要はありません。
まずは「勉強した後に教科書を閉じて3分間思い出す」という小さな習慣から始めてみましょう。
そして、自分に合う方法を少しずつ調整していきます。
アクティブリコールの目的は、たくさんの問題をこなすことではありません。自分が何を覚えていて、何をまだ思い出せないのかを知り、その結果を次の学習につなげることです。
「読む→思い出す→答え合わせ→修正する→時間を空けてもう一度思い出す」という流れを作ることができれば、アクティブリコールは単なる暗記テクニックではなく、毎日の勉強を自分で調整するための学習システムになっていきます。
アクティブリコールの注意点
アクティブリコールは、勉強したことを思い出す練習です。上手に使えば、普段の勉強に取り入れやすい方法ですが、「思い出せば思い出すほどよい」と単純に考えればよいわけではありません。
使い方を間違えると、かえって勉強しにくくなることもあります。ここでは、アクティブリコールを効果的に使うために知っておきたい注意点を説明します。
理解していないことを、いきなり暗記しない
アクティブリコールをするときに注意したいのが、まだ理解していない内容を、最初から無理に思い出そうとしないことです。


たとえば、数学で「平方根」を初めて勉強したとします。意味がよくわからないまま公式だけを覚えようとしても、問題で使えるようになるとは限りません。
理科でも、「なぜこの現象が起こるのか」を理解していない状態で、答えだけを暗記するのは十分な学習とはいえません。
まず教科書や授業の説明を読んだり、例題を解いたりして、内容を理解します。そのうえで教材を閉じ、「自分は何を覚えているか」と確認します。
つまり、アクティブリコールは理解の代わりになる方法ではなく、理解した内容を思い出して確認するための方法として使うことが大切です。
「思い出せない=失敗」ではない
アクティブリコールをしていると、当然ながら思い出せないことがあります。
英単語を10個覚えたのに3個しか思い出せなかったり、歴史の人物名が出てこなかったりすることもあります。
しかし、それを「自分は記憶力が悪い」「勉強に失敗した」と考える必要はありません。
むしろ、思い出せなかったことで、自分がまだ十分に覚えていない部分を発見できたと考えられます。


たとえば、問題集で「大政奉還」という言葉を思い出せなかったなら、その問題が「もう一度復習したほうがよい場所」を教えてくれたことになります。
思い出せなかったら、答えを確認して、もう一度思い出してみましょう。
間違った答えをそのままにしない
アクティブリコールでは、答えを間違えることがあります。
大切なのは、間違えた後に正しい内容を確認することです。
たとえば、「三角形の面積」を求める問題で計算を間違えたなら、正解を見るだけで終わらせず、「どこで間違えたのか」を確認します。
英単語なら、思い出せなかった単語の正しいつづりや意味を確認します。
社会なら、人物名や出来事を確認します。
そして、できれば少し時間を置いて、もう一度自分で答えてみます。
「思い出す」だけで終わらず、思い出す→答え合わせ→修正→もう一度思い出すという流れを意識しましょう。


アクティブリコールだけに頼らない
アクティブリコールは便利な方法ですが、これだけをやれば十分という万能な勉強法ではありません。


たとえば、初めて学ぶ内容では、まず教科書を読んだり、先生の説明を聞いたり、例題を確認したりする必要があります。
数学では、解き方を理解したうえで実際に問題を解くことが必要です。
英語では、単語を思い出すだけでなく、英文を読んだり、文法を使って文を作ったりする練習も必要です。
国語では、文章を実際に読んで内容を理解することが必要です。
つまり、
「理解する」
「思い出す」
「問題を解く」
「間違いを直す」
といった複数の学習活動を組み合わせることが大切です。
アクティブリコールは、その中の一つとして活用しましょう。
「何問やったか」だけを目標にしない
アクティブリコールでは、問題をたくさん解くことだけを目標にしないようにしましょう。


たとえば、「今日は100問やった」としても、答えを確認するだけで終わっていたり、間違えた問題を復習していなかったりすれば、学習の質を十分に確認できません。
「何問やったか」だけではなく、
「何を思い出せたか」
「何が思い出せなかったか」
「間違いを修正できたか」
にも注目しましょう。
教科によって方法を変える
最後に、すべての教科で同じアクティブリコールをする必要はありません。
英語なら「日本語を見て英単語を思い出す」、数学なら「問題を見て解き方を思い出す」、理科なら「用語や仕組みを説明する」、社会なら「人物・出来事・理由を関連づけて思い出す」といった方法があります。
自分が勉強している内容に合わせて、「何を思い出せば、実際のテストで役立つのか」を考えてみましょう。
アクティブリコールの目的は、ただ記憶を試すことではありません。
「自分は何を覚えていて、何がまだ不十分なのか」を知り、次の学習につなげることです。
この視点を持って使えば、アクティブリコールは毎日の勉強を見直すための、実践的な方法になります。


まとめ 「読む」だけの勉強から、「思い出す」勉強へ
アクティブリコールとは「思い出す勉強」
アクティブリコールとは、勉強した内容を教材を見ずに、自分の記憶から思い出す学習方法です。
英単語なら「日本語を見て英語を思い出す」、社会なら「人物や出来事を説明する」、数学なら「問題を見て解き方を思い出す」といった方法があります。
「見ればわかる」だけで終わらず、「自分で思い出せるか」を確かめることがポイントです。
検索練習とテスト効果
アクティブリコールと関係が深いのが「検索練習」です。これは、記憶の中から学習した情報を取り出す練習のことです。また、こうした記憶の取り出しによって、その後の学習や記憶が促進される現象は「テスト効果」と呼ばれています。
つまり、問題に答えることは、単に自分の成績を確認するためだけではありません。思い出すことそのものが、学習の一部になるのです。
今日からできる3ステップ
難しいことを始める必要はありません。まずは、いつもの勉強に次の3ステップを加えてみましょう。
① 勉強する
教科書を読んだり、授業の復習をしたり、問題を解いたりします。
② 教科書を閉じて思い出す
「今日何を勉強した?」「重要なことは何?」と自分に問いかけます。
③ 答えを確認する
思い出せたことと思い出せなかったことを確認し、間違っていた部分を修正します。
「読む」だけの勉強から、「思い出す」勉強へ。
まずは今日の勉強の最後に、教科書を閉じて数分間思い出すところから始めてみましょう。
