中学受験に失敗したときの向き合い方
中学受験の現実と背景を知る
近年、中学受験をする小学生が増えています。たとえば、2023年には首都圏で私立や国立の中学を受験した子どもが5万2千人以上にのぼり、これは過去最多の人数でした。2024年もほとんど変わらない数の子どもたちが受験にチャレンジしています。特に東京の文京区や中央区では、小学6年生のうち半分以上の子が中学受験をしているというデータもあります。このように、中学受験はごく普通のことになりつつあります。
2023年私立・国立中学受験者数は過去最多の52,600名、受験率も過去最高の17.86%に!《首都圏》
2024年私立・国立中学受験者数は52,400名と微減ながら受験率は過去最高の18.12%に!《首都圏》
「中学受験」過去最多…首都圏は5人に1人 「就職氷河期世代」の保護者たち・生涯賃金の格差
なぜこれほど多くの家庭が中学受験を選ぶのでしょうか。それにはいくつかの理由があります。一つは、新型コロナウイルスの流行が影響しています。コロナ禍で多くの公立学校が長期間休校になったとき、私立の学校はすばやくオンライン授業に切り替えるなど、柔軟な対応をとりました。その姿が、多くの保護者に安心感を与えたのです。
また、「親ガチャ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、自分が生まれた家庭によって将来が左右されることへの不安を表す言葉です。そうした教育格差を少しでも減らすために、中学受験でよりよい教育環境を目指す家庭も増えています。さらに、今の親世代は、就職がとても難しかった「就職氷河期」に苦しんだ経験を持つ人が多く、「自分の子どもには同じ思いをさせたくない」という気持ちが強くなっています。
このようにして、保護者の多くは「中学受験をしなければ将来が不安だ」「受験しないと子どもの選択肢が減るかもしれない」と考えがちです。結果として、中学受験は「して当たり前」のものとなり、それに失敗することがとても重く感じられるようになっています。しかし、中学受験の結果は社会のさまざまな要因が関係していて、決して子どもや親の努力不足だけで決まるものではありません。ですから、万が一うまくいかなかったときでも、必要以上に自分たちを責める必要はないのです。
不合格は終わりではなく、次へのスタート
中学受験はとても競争が激しいものです。第一志望の学校に合格するのは、全体の3割にも届かないと言われています。多くの子どもたちは、複数の学校を受験しながら、一番行きたい学校にも挑戦しています。そのため、どこかの学校に不合格になるのは、実は特別なことではありません。
たとえ第一志望に落ちたとしても、それは「失敗」ではありません。もちろん、悔しい気持ちや悲しい気持ちはあるでしょう。ですが、それまで努力してきた時間が無意味になるわけではないのです。むしろ、長い目で見れば、その努力は大きな力になります。
受験勉強を通じて子どもたちは、多くのことを学んでいます。たとえば、毎日コツコツと勉強する習慣、難しい問題に立ち向かう力、自分で考える力などは、どんな学校に進学しても役に立ちます。さらに、悔しい経験から立ち直ることで、心の強さも身につけることができます。このような「生きる力」は、試験の合否とは関係なく、将来の人生にとって大切な宝物になります。
保護者の方にとっては、子どもの不合格はつらい出来事かもしれません。でも、「中学受験は子どもの成長のための投資」だと考えてみてください。短期的に結果が出なくても、その経験は将来に生きてくるはずです。結果だけを見るのではなく、そこまでの過程にこそ、大きな意味があるのです。
親と子どもの気持ちを大切にする
中学受験は、子ども一人で乗り越えるものではありません。おうちの人も一緒に勉強を見たり、塾に通わせたりと、たくさんのサポートをしてきたと思います。だからこそ、試験に落ちたとき、そのショックを一番強く感じるのは保護者であることも少なくありません。
でも、その気持ちをそのまま子どもにぶつけてしまうと、子どもはさらに傷ついてしまいます。「どうしてダメだったの?」という言葉の裏に、「あなたはがんばってなかった」と責める気持ちが隠れているように感じてしまうかもしれません。
大切なのは、まず保護者自身が自分の感情をしっかりと受け止めることです。「がんばったけれど、うまくいかなかった。それでも子どもはよくがんばった」と思えるようになったら、子どもに対しても温かい言葉をかけられるようになります。
たとえば、「おつかれさま。ここまでよくがんばったね」「あなたの努力はちゃんと見てたよ」といった声かけは、子どもの心をやさしく包みます。そうした安心感が、子どもをもう一度前向きにさせてくれます。そして、次のステップへ進むための力になります。
子どもは大人よりも柔軟です。一度落ち込んでも、まわりの大人の支えがあれば、またすぐに元気を取り戻せます。そのためにも、まずは保護者が冷静になり、子どもの気持ちに寄り添っていくことがとても大切なのです。
子どもの心のケアと立ち直りを促す親の役割
中学受験に失敗したとき、子どもの心に何が起こるのか
中学受験は、子どもにとってとても大きな挑戦です。何か月、あるいは何年もかけて勉強をがんばってきたのに、不合格という結果が返ってきたとき、子どもは心に深い傷を負うことがあります。
たとえば、「あんなに努力したのにどうして…」という思いがわいてくるかもしれません。「もう勉強なんてしたくない」「自分はダメな人間だ」と思ってしまうこともあります。周りの友だちが合格していたり、家族ががっかりした表情を見せたりすると、さらに自信をなくしてしまうこともあるのです。
とくに注意したいのは、不合格を「自分の存在が否定されたこと」だと感じてしまうことです。「ぼくの努力は全部ムダだったのかな」「お母さんをがっかりさせてしまった」と思い込んでしまうことがあります。このような気持ちは、心の元気をうばってしまい、学校に行きたくない、何もやる気が出ないという状態につながることもあります。
また、親が不安になっている気持ちは、子どもにもすぐに伝わります。親が落ち着かない様子を見せたり、「なぜ落ちたのか」ばかりを考え続けていたりすると、子どもは安心できなくなってしまうのです。だからこそ、受験の結果がどうであれ、子どもの心の状態にしっかり目を向けることがとても大切です。
絶対に言ってはいけない言葉・やってはいけない行動
受験に落ちた直後は、親として何か励ましたいという気持ちが強くなるでしょう。でも、その気持ちがかえって逆効果になることもあります。
たとえば、「がんばったんだから良かったじゃない」「結果なんて気にしなくていいよ」と言ってしまうと、子どもは「自分の悲しみをわかってくれていない」と感じてしまいます。また、「さあ、もう高校受験に向けて切り替えよう!」と言うのも、子どもの気持ちが整理できていないうちでは、無理に前向きになるよう求められているように感じてしまい、つらくなります。
ほかにも、「夏休みにサボったからだよ」とか、「〇〇ちゃんは合格したのに」などの言葉は、努力を否定されたように感じてしまいます。このような言葉は、子どものやる気や自信を大きく傷つけるので、絶対に避けなければなりません。
また、親が子どものスケジュールを細かく管理しすぎたり、勉強の内容に口を出しすぎたりするのも、子どもの自主性を奪ってしまうことになります。親が直接教えると、塾での学びと食い違ってしまい、子どもが混乱することもあります。勉強のことで心配なことがあれば、塾の先生に相談したり、子どもが先生に質問できるようサポートするのがよい方法です。
子どもの心を立ち直らせるために親ができること
受験に失敗した子どもを支えるには、親の言葉や行動がとても大きな意味をもちます。では、どのように接することが大切なのでしょうか。
努力の過程をしっかり認める
大切なのは、「結果」ではなく「過程」に目を向けることです。「合格できなかったけれど、あなたが毎日コツコツ勉強した姿は本当にすごかったよ」「難しい問題にもあきらめずに取り組んでいたのを、ちゃんと見ていたよ」といった言葉を伝えることで、子どもは「がんばってよかった」と思えるようになります。
結果が出なかったからといって、努力がムダになるわけではありません。その「経験」は、これからの人生にとって大きな力になります。そのことをしっかり言葉で伝えることが大切です。
小さな目標を立てて、少しずつ前に進む
「これからどうすればいいのか」と不安になる子どもには、いきなり大きな目標を押しつけるのではなく、小さな目標をいっしょに考えてあげましょう。
たとえば、「今週は計算ミスをしないように練習しよう」や「毎日20分だけ理科の復習をしよう」など、少しがんばれば達成できる目標を立てることで、自信を取り戻しやすくなります。
目標を紙に書き出して、できたことにチェックを入れていくのもよい方法です。目に見える形で「できた!」を感じられると、少しずつやる気も戻ってきます。
リフレッシュできる時間を大切にする
勉強だけでなく、心と体を休める時間もとても大事です。好きなゲームをしたり、家族で映画を見たり、外を散歩したり、おいしいものを食べたりすることで、心がリラックスします。
また、十分な睡眠と、栄養のある食事も忘れずに。体調が整うことで、気持ちも前向きになりやすくなります。生活のリズムを整えるのも、親がサポートできる大切なことです。

まとめ:子どもの心に寄り添うことが、次への一歩になる
子どもが中学受験で不合格になったとき、その心はとても傷ついています。親として、どんな言葉をかけ、どんな行動をとるかが、子どもの回復を大きく左右します。
まずは、子どものがんばりを心から認めましょう。そして、結果だけを見ずに、その過程をしっかり評価してあげてください。やってはいけない言葉や行動は避け、子どもの気持ちに寄り添いながら、少しずつ前を向けるようサポートしていきましょう。
受験の結果は人生の一部にすぎません。今は悲しみの中にあっても、それを乗り越えた経験は、必ず子どもを強くします。親がそばにいて支えてくれることが、子どもにとって最大の安心となり、次への力になります。
親自身の心のケアと家族の支え合い
親が感じるストレスと不安の正体
中学受験は、子どもが主役のように見えるかもしれませんが、実は親も大きなストレスを感じています。その原因には、いくつかの理由があります。
まず、子どもが思春期を迎える時期と中学受験のタイミングが重なることが多いことが挙げられます。思春期になると、子どもは少しずつ自分の考えを持ち、自立しようとする気持ちが強くなります。それまで素直だった子どもが、急に「口ごたえ」をするようになったり、「勉強しなさい」と言われても反発するようになったりすることがあります。こうした変化は自然な成長の一部ですが、受験というプレッシャーと重なると、親子関係がぎくしゃくしやすくなるのです。
また、経済的な面でも不安が生まれます。中学受験に必要な塾代や模試代、講習会の費用は合計すると300万円ほどになることもあります。たとえば、月謝に毎月5万円以上かかり、夏期講習では10万円以上かかることも珍しくありません。こうした負担が続くと、「このままで家計は大丈夫だろうか」と心配になるのは当然です。
さらに、親の日常も忙しくなります。塾への送り迎え、お弁当の準備、家庭学習のサポートなど、やることが次から次へと出てきます。自分の自由な時間が減り、心も体も疲れてしまうと、イライラしやすくなったり、落ち込みやすくなったりします。
そしてもう一つ見落とされがちな問題があります。それは、家の中で親が一人でがんばりすぎてしまうことです。たとえば、父親が仕事で忙しくてほとんど家のことに関われなかったり、祖父母が協力的でなかったりすると、母親一人に負担が集中します。誰にも頼れない状態が続くと、気持ちが追い詰められてしまい、心のバランスを崩すこともあります。

こうしたストレスや不安が続くと、親が子どもに対して厳しくなりすぎたり、逆に過保護になったりすることがあります。そうなると、子どもも不安になり、勉強に集中できなくなることがあります。つまり、親の心の状態は、子どもにも大きく影響を与えるのです。
受験の合否だけでなく、家庭全体の雰囲気や家族の関係まで悪くなってしまうこともあります。だからこそ、親が自分自身の心の健康を大切にすることは、子どものためにも、家族全体のためにもとても重要なのです。受験の成功だけを目指すのではなく、家族の「幸せ」や「安心」を守る視点が大切になります。
親ができるセルフケアの工夫
ストレスや不安をすっかりなくすことはできません。でも、自分の心をいたわる「セルフケア」の方法を知っておくことで、ストレスとうまくつき合うことができます。
まず、効果的なのは、今の気持ちを紙に書き出すことです。「今、何に不安を感じているのか」「どんなことがつらいのか」など、思っていることを素直に書いてみましょう。書くことで、自分の気持ちが整理されて、心が少し軽くなります。「塾の費用が心配」「子どもが反抗的でつらい」など、原因が見えてくることで、どう対処すればいいかも見えてきます。
また、深呼吸をしてリラックスしたり、軽く体を動かすこともおすすめです。たとえば、散歩をする、ラジオ体操をする、ヨガを試してみるなど、ちょっとした運動でも気持ちがスッキリすることがあります。体を動かすと、気分転換になり、心も自然と落ち着いてきます。
さらに、自分の好きなことをする時間を持つのも大切です。本を読む、音楽を聴く、カフェで一息つく、友だちと話す、映画を観るなど、自分が「楽しい」と思えることを少しでもする時間を持ちましょう。気持ちがリフレッシュされて、またがんばろうと思えるようになります。
入浴もリラックスにはとても効果的です。熱すぎないお湯(40度くらい)に肩までゆっくり浸かることで、体の疲れがとれ、心もほぐれていきます。毎日ほんの15分でも、自分のためだけの「ケアの時間」を持つことが、心の健康を保つためにはとても大事です。

親が無理をして自己犠牲的にがんばりすぎると、長続きしません。そしてその無理が、子どもにも伝わってしまいます。だからこそ、「まずは自分の心を整えること」が、結果的に子どもを応援する力になるのです。
家族で支え合う大切さ
中学受験は、子ども一人で戦うものではありません。家族全員で協力して取り組むことで、より良い結果につながります。家族の中で「誰が何をするのか」をあらかじめ話し合い、役割をはっきりさせると、親も子どもも安心できます。
たとえば、母親が勉強の進み具合を見守り、父親が「いつでも相談にのるよ」と心の支えになる、というふうに役割を分けることができます。お弁当を作るのが負担になっているなら、週に1回だけでも父親が担当する、という方法もあります。
大切なのは、「どちらか一方がすべてを抱え込まないこと」です。誰か一人ががんばりすぎると、ストレスが高まり、その気持ちが子どもに伝わってしまいます。
また、夫婦で意見が食い違ったときには、子どもの前では議論せず、別の場所で冷静に話し合うことが大切です。子どもは、親の言うことがバラバラだと混乱し、「どうすればいいのか分からない」と不安になってしまいます。家族全員が同じ方向を向いて応援してくれることで、子どもは大きな安心感を持ち、受験勉強に集中できるようになります。
受験はゴールではなく、その後の人生の一歩です。その道を家族みんなで支え合いながら歩んでいくことが、何よりも大切なのです。親が自分の心を守りながら、家族みんなで力を合わせていけば、きっと子どもにとっても良い受験経験となるでしょう。
次なる進路の選択肢と戦略

公立中学校への進学:そのメリットと課題
中学受験に挑戦したけれど、うまくいかなかった――そんなとき、多くの家庭で考えるのが「地元の公立中学校への進学」です。これはとても一般的で、決して特別なことではありません。実は、公立中学校には私立中学校にはない良さがたくさんあります。
まず、公立中学校の大きな魅力のひとつは「多様性」です。いろいろな家庭の子どもたちが集まっていて、性格も考え方も違います。たとえば、スポーツが得意な子、本を読むのが好きな子、静かな子、元気な子――本当にいろんなタイプの人と出会うことができます。そうした人たちと協力したり、話し合ったりすることで、社会性や思いやりの気持ちが自然に身についていきます。これは将来、大人になって社会で働くときにとても役立つ力になります。
また、公立中学校には小学校の友達がたくさん進学することが多いので、新しい環境でも安心しやすいという良さがあります。知らない人ばかりの私立中学校とは違って、知っている友達と一緒に学校生活を始められるのは心強いことです。
さらに、自宅から学校までの距離が近いことも、公立中学校ならではのメリットです。通学にあまり時間がかからないので、朝もゆっくりでき、放課後の時間も有効に使えます。加えて、学費の面でも公立は私立よりずっと負担が少なくなります。中学受験で多くのお金をかけた後だからこそ、この負担の軽さは家族にとって大きな安心になります。
高校受験でのリベンジという考え方
中学受験がうまくいかなかったからといって、夢や目標をあきらめる必要はありません。公立中学校に進学して、そこでしっかり勉強を続けることで、高校受験で再びチャレンジすることは十分可能です。
中学受験のためにがんばってきた勉強の経験は、決して無駄にはなりません。たとえば、毎日の勉強の習慣がすでに身についている子は、授業でも自宅学習でもスムーズに学びを進められます。さらに、中学受験のために学んだ内容は、公立中学校の授業ではとても役立つことが多く、他の子よりもスピード感を持って学習できることがあります。
こうした強みを活かして、自宅で高校の内容を少しずつ先取りしていくのもよい方法です。たとえば、「スタディサプリ」のような安価な通信教育を使えば、自分のペースで勉強を進めることができます。中学1年生のうちから高校の基礎に触れておけば、3年後の高校受験で自信を持って挑戦できるでしょう。
保護者の方も、学習塾や教材の選び方を工夫することで、私立中学校に通う場合と同じくらい、あるいはそれ以上の成果を目指すことが可能です。中学受験に使った費用を、今度は高校受験の塾代や教材代に使うことで、経済的にも無理なく勉強を続けることができます。
中学受験で得た経験をどう活かすか
中学受験のためにたくさん勉強したことは、結果がどうであれ、これからの学びにとって大きな意味があります。たとえば、「毎日決まった時間に机に向かう」「自分で計画を立てて勉強する」「難しい問題にもあきらめずに挑戦する」といった習慣は、中学でも高校でもとても大切です。
そしてなにより、「がんばった経験」は、これからの人生で困難に出会ったときに、自分を支えてくれる大切な力になります。「一度失敗しても、また立ち上がればいい」という考え方が身につくことは、学力以上に価値のある成長です。中学受験がうまくいかなかったとしても、その努力は決して無駄にはなりません。
公立中学の課題とその対策
もちろん、公立中学校には課題もあります。たとえば、学校によって先生の教え方や指導の質に差があったり、学習意欲の低い生徒にペースを乱されてしまうことがあるかもしれません。特に、学力の高い子が個別にサポートを受けられにくいという問題もあります。
こうした課題に対応するには、家庭でのサポートがとても大切になります。たとえば、親子で学習の計画を立てたり、進路についての情報を積極的に調べたりすることが有効です。地域の塾やオンライン教材をうまく活用することで、学校の授業だけに頼らず、自分に合った学び方を見つけることができます。
私立中学校への再挑戦という選択肢
中学受験に失敗してしまっても、すべてのチャンスが終わったわけではありません。多くの私立中学校では、1月の合格発表のあとに「2次募集」や「3次募集」を行うことがあります。これは、合格者が入学を辞退して定員に空きが出た場合に、新たに受験生を募集する制度です。
もし、子どもが「もう一度受けてみたい」と強く思っているなら、こうした機会に再チャレンジするのも選択肢の一つです。ただし、これはあくまでも子ども自身が希望していることが前提です。親が無理に受けさせるのではなく、本人が納得して挑戦することが大切です。
また、すでに「併願校」や「滑り止め校」に合格している場合、それを前向きに捉えることも重要です。その合格は、入試の雰囲気に慣れる貴重な経験でもあり、自信をつけるきっかけになります。「合格した学校に行く」ということ自体も、立派な選択です。
子どもと一緒に進路を考えることの大切さ
進路について考えるとき、もっとも大切なのは、子ども自身の気持ちです。たとえ親がどんなに良い学校だと思っていても、子どもが納得していなければ意味がありません。逆に、子どもが自分で選んだ道であれば、どんな環境でも前向きにがんばれるものです。
今回、中学受験にうまくいかなかったとしても、それをきっかけに、より自分らしい進路を見つけることができるかもしれません。公立中学に進むにしても、再び受験に挑戦するにしても、子どもの意志を尊重し、家族みんなで前向きに支え合っていくことが何より大切です。
結論:中学受験の経験を未来へ活かすために
中学受験の失敗は「終わり」ではなく「始まり」
中学受験に失敗するという経験は、子どもにとっても保護者にとっても、とてもつらいものです。努力してきた日々を思い返し、悔しさや悲しさに包まれることもあるでしょう。しかし、この結果は「失敗」ではあっても「終わり」ではありません。むしろ、ここから子どもが大きく成長するチャンスが始まるのです。
たとえば、スポーツ選手が大事な試合で負けたあと、次の大会に向けて気持ちを切り替えるように、中学受験に落ちたあとも、次の進路や目標に向けて歩み続けることができます。この経験を通じて、子どもは「悔しさを乗り越える力」や「もう一度チャレンジする勇気」を学ぶことができるのです。
子どもの心を支えるために大切なこと
中学受験に合格できなかったとき、まず大切にすべきことは、子どもの気持ちのケアです。子どもは「自分が否定された」と感じるかもしれません。だからこそ、保護者がこれまでの努力をしっかり認めてあげることが必要です。
たとえば、「毎日遅くまで勉強していたね」「模試のたびに復習してがんばっていたよね」と、具体的に声をかけてあげると、子どもは「自分の努力を見てくれていたんだ」と感じ、自信を少しずつ取り戻すことができます。
逆に、「あのときもっと勉強していればよかったのに」「○○ちゃんは合格したのに…」というような言葉は、子どもの心を傷つけてしまいます。他人と比べるのではなく、子ども自身のがんばりに目を向けて、そっと寄り添ってあげることが大切です。
また、少しずつ小さな目標を立てて、それを達成していくことも有効です。たとえば、「毎日10分間、英語の単語を覚える」「1週間で理科の1単元を終わらせる」など、実行しやすい目標を一緒に決めて、達成感を積み重ねていきましょう。
保護者自身の心のケアも忘れずに
中学受験は、子どもだけでなく保護者にも強いストレスを与えます。たとえば、塾への送り迎え、経済的な負担、子どもの成績への心配など、様々なプレッシャーがあります。受験が終わったあと、「自分のせいで失敗させてしまったのでは」と思い込んでしまう方も少なくありません。
しかし、保護者が過度に落ち込むと、その気持ちは子どもにも伝わってしまいます。ですから、保護者自身も自分の気持ちに向き合い、無理をしすぎずにリラックスできる時間を持つようにしましょう。
たとえば、友人と話す時間をつくったり、趣味に没頭したりすることで、心をリセットすることができます。家族の中で役割を分担し、協力しながら前向きな家庭の雰囲気をつくることも、子どもの回復を支える大きな力になります。
次の進路を前向きに選ぶ
中学受験の結果にかかわらず、その後の進路をどのように選ぶかは、とても重要です。たとえば、公立中学校に進学する場合、学費の負担が少なく、自宅から通いやすいというメリットがあります。また、小学校からの友達とそのまま一緒に通えるので、新しい環境にもなじみやすいです。
さらに、公立中学にはさまざまな価値観を持つ生徒が集まるため、社会性や人と関わる力を自然と身につけることができます。これは、将来の高校生活や社会に出てからとても役立ちます。
中学受験で勉強してきた経験は、公立中学校でも大きな強みになります。基礎学力がしっかり身についているので、授業がわかりやすく感じたり、自宅学習の習慣が役に立ったりします。通信教育や塾をうまく活用することで、高校受験での「リベンジ」もじゅうぶんに可能です。
たとえば、「スタディサプリ」のようなサービスを使って、自分のペースで先取り学習をする子どもも多くいます。そうした工夫で、将来の志望校合格に向けた準備を少しずつ始めることができます。
再チャレンジのチャンスを活かす
中学受験では、第一志望に不合格だったとしても、すべてが終わったわけではありません。多くの私立中学校では、定員に空きがある場合に「二次募集」や「三次募集」を行うことがあります。もし、子どもが「もう一度挑戦したい」という気持ちを持っているならば、そうした再挑戦の機会を前向きに検討することもできます。
ただし、このときに注意が必要なのは、保護者の希望ではなく、子ども自身が本当に「もう一度がんばりたい」と思っているかどうかです。親の思いを押しつけるのではなく、子どもの意思を尊重し、納得して選んだ進路こそが、もっとも良い未来へとつながる道になります。
中学受験の経験を「人生の糧」に変える
中学受験というひとつの挑戦は、結果に関係なく、子どもにとってとても大きな学びの場になります。「努力を続ける力」「挫折から立ち直る力」「目標に向かって進む姿勢」など、どれもこれからの人生に役立つ力ばかりです。
この経験を「通過点」として前向きにとらえることができれば、子どもはきっと、どんな困難にも立ち向かえる強い心を育てていくことができるでしょう。
そして、保護者はその道のりを照らす「一番の応援者」であることを忘れないでください。温かく見守り、必要なときには励まし、子どもと一緒に次の一歩を踏み出していくことが、何よりも大切なのです。