次のようなことでお困りではありませんか。
- 勉強がなかなか頭に入らない
- ひとりで勉強していると飽きてしまう
- 受動的な学習になりがち
- 学習のモチベーションを維持したい

塾・予備校の講師、家庭教師の経験20年以上のナガクラが、解決のために「相互教育法」を紹介します。
はじめに:なぜ「教えること」が学習に効果的なのか
「教える=最高の学び」ってどういうこと?
みなさんは、友だちに何かを教えた経験がありますか?
たとえば、友だちが数学の問題に困っていたときに、解き方を説明したことがある人もいるでしょう。あるいは、英語の単語の覚え方をアドバイスしたことがある人もいるかもしれません。
そんなとき、ふしぎなことに「自分もよくわかってきた!」と感じたことはありませんか?
これは気のせいではなく、本当に「教えること」が学びにとても効果的だという証拠なのです。
「人に教えることは、最高の学びになる」
この考え方は、教育の世界ではとても有名で、たくさんの研究でも確かめられています。なぜなら、誰かにわかりやすく教えるためには、自分自身がその内容をしっかり理解していないといけないからです。
たとえば、次のようなことが起こります。
- 教える前に、「何が大事なのか」「どう説明すればいいのか」を考えることで、自分の頭の中が整理される。
- 教えながら、「あれ?ここがよくわかっていなかったな」と気づくことができる。
- 相手の反応を見て、「こう説明したらわかりやすいんだ」と新しい発見がある。
このように、「教えること」は、自分の理解を深めたり、新しい気づきを得たりするチャンスなのです。
だからこそ、「教えること」は、ただの親切やおせっかいではなく、自分自身の学びを助ける、とても大切な行動なのです。
相互教育法とは何か:定義と簡単な歴史
では、「教えること」が学びに役立つのなら、それをもっと積極的に取り入れた学び方があってもよいはずです。
それが「相互教育法(Peer Teaching)」とよばれる学習法です。
相互教育法とは、「学ぶ人どうしが、教え合いながら学ぶ方法」のことです。
たとえば、クラスメイトどうしがペアになって、おたがいに英語の単語を出し合って練習したり、社会の用語をクイズ形式で出し合ったりする学び方です。
ときには、一人が「先生役」、もう一人が「生徒役」になって、あるテーマについて教える活動も行います。
このように、先生が一方的に教えるのではなく、学ぶ人どうしが協力して知識や考え方を伝え合うことで、理解を深めるのが特徴です。
相互教育法の歴史についても見ておきましょう。
相互教育法の考え方は、実は何百年も前からありました。
とくに有名なのは、18世紀のイギリスで活やくしたアンドリュー・ベルという教育者と、ジョゼフ・ランカスターという人物です。
このふたりは、大勢の子どもたちに教育を行うために、「子どもたちが子どもたちに教える」という方法を考え出しました。
そのときに使われたのが、「モニター制」と呼ばれる方法で、年上の子どもが年下の子どもに教える形でした。
この方法は「モニトリアル・システム」として知られ、当時のイギリスやインドなどで多くの学校に取り入れられました。
つまり、相互教育法は、むかしから「教育のチカラ」を広げる方法として注目されていたのです。
もちろん、今では「年上が教える」だけではなく、同じ学年や年齢の人どうしでも効果的に教え合えるということが、たくさんの研究でわかっています。
教え合い学習が注目される理由:研究とエビデンス
では、なぜ「教え合い」が現代の教育でも注目されているのでしょうか?
それには、いくつかの理由があります。ここでは、実際の研究にもとづいた例を紹介しながら説明していきます。
理由1:自分の理解が深まる
アメリカの大学で行われた実験があります。
学生たちを2つのグループに分け、一方のグループには「この内容をあとで友だちに教えてもらいます」と伝えました。もう一方には「あとでテストをします」と伝えました。
その結果、「教えるつもりで勉強したグループ」のほうが、内容をよく理解し、覚えていたということがわかりました。
これは、「人に教えるつもり」で勉強すると、ただ読むだけでなく、「どう伝えるか」「どこが大事か」と深く考えるようになるからです。
理由2:説明することで頭が整理される
自分の考えを言葉にして説明することを「アウトプット」といいます。
このアウトプットの効果については、教育心理学の分野でも多くの研究がされています。
ある研究では、中学生どうしがグループで問題を解くときに、「自分の考えを説明しながら取り組む」ようにすると、成績が大きく上がったことがわかりました。
これは、「なんとなくわかった気になる」のではなく、「人に伝わる形」で話すことで、考えがクリアになったからだと考えられています。
理由3:学ぶ意欲が高まる
教え合いの活動では、自分が「誰かの役に立っている」と感じることができます。
たとえば、友だちに「ありがとう、わかったよ!」と言われたら、うれしくなりますよね。
このような「うれしさ」や「自信」が、もっと学びたい!という意欲につながるのです。
また、「教える側」になった経験があると、「もっとしっかり理解しておこう」という気持ちにもなります。
これは、自分の中に「責任感」が生まれるからです。
理由4:人間関係がよくなる
教え合い学習では、おたがいに助け合ったり、協力したりする機会がたくさんあります。
その中で、「ありがとう」「がんばろう」という声かけが増え、友だちどうしの関係もよくなることが知られています。
ある日本の中学校で、定期的に教え合いの活動を取り入れたところ、クラスの中でのトラブルが減り、安心して学べる雰囲気が生まれたという報告もあります。
このように、「教えること」は、学びを深めるだけでなく、クラス全体の空気までよくする可能性を持っているのです。
具体例から見る「教えること」の学びへの効果
ここでは、実際に「教えること」で学力や理解が深まった具体例をいくつか紹介します。
例1:数学の図形問題を友だちに教えたAさん
Aさんは、図形の証明問題が得意でした。ある日、友だちのBさんに「どうやって書けばいいの?」と聞かれ、一緒に解き方を説明しました。
そのときに、「なぜこの角度が等しくなるのか」を言葉にしようとして、自分でも改めて考えることになりました。
すると、「この部分の理由は合同だからなんだ!」と、自分でもあいまいだったところを見つけて、しっかり理解することができたのです。
例2:社会の語句をクイズにして出し合ったグループ
あるグループでは、歴史の用語をカードにして、クイズ形式で出し合う活動を行いました。
問題を作る側は、「どうすれば答えが導けるか」「どのヒントが大事か」を考えます。
この活動を続けた結果、ただ暗記するよりもずっと楽しく、記憶に残る形で学ぶことができたと、ほとんどのメンバーが感じたそうです。
例3:理科の実験結果を説明したCさん
Cさんは、理科の実験でわかったことを、グループのメンバーに説明する係になりました。
最初は不安でしたが、「どうしたらわかりやすくなるか」を考えて図を描いたり、例え話を使ったりするうちに、自分の理解も深まりました。
その後の確認テストでは、実験の理由や原理をしっかり説明できるようになっていたそうです。
このように、「教えること」にはさまざまな効果があります。
そしてそれをうまく取り入れた学習法が、「相互教育法(Peer Teaching)」なのです。
相互教育法のメリット
「相互教育法(Peer Teaching)」は、学ぶ人同士が教え合う学習法です。一人で問題を解くだけでなく、誰かに教えたり、一緒に考えたりすることで、学びの質がぐんと深まります。この章では、相互教育法によってどんな良いことがあるのかを、わかりやすくくわしく紹介していきます。
理解の定着が深まる
教えることで自分の理解を試す
私たちは、しばしば誰かに何かを教えるとき、「ちゃんとわかっていないと説明できない」という経験をしたことがあります。たとえば、友だちに数学の問題を教えようとしたとき、自分がその内容をしっかり理解していなければ、うまく説明できませんよね。
教えるという行為は、自分の知識を整理し、頭の中でしっかりと組み立てる必要があります。このとき、ただ問題を解くだけのときよりも、ずっと深く内容を考えることになります。
たとえば、英語の「現在完了形」を友だちに説明するとしましょう。自分では「have+過去分詞」だと覚えていても、それだけでは説明になりません。「なぜその形を使うのか」「どんなときに使うのか」「過去形との違いは何か」など、相手の立場に立って考えながら説明することで、自分の理解もより確かなものになります。
「アウトプット」で記憶に残りやすくなる
教えることは、いわば「アウトプット(出力)」です。人はインプット(入力)だけではなかなか覚えられません。インプットとは、たとえば教科書を読む、先生の話を聞く、ノートを写す、といった行動です。もちろん、これも大切な学びの一部ですが、それだけでは記憶に残りにくいのです。
アウトプット、つまり「自分の言葉で説明する」「問題を解いて答えを出す」「図や表にまとめる」などを行うことで、頭の中の情報が整理され、長く記憶に残ります。特に誰かに教えることは、強力なアウトプットになります。
研究でも、「学んだあとに他人に説明することが記憶の定着に効果的」という結果が多く報告されています。つまり、「誰かに教えるつもりで学ぶ」ことが、学習効果を高めるカギになるのです。
自信とコミュニケーション力が育つ
「教えることができる自分」によって自信が育つ
誰かに「わからないから教えて」と頼まれたとき、それに答えられる自分に、ちょっとした誇らしさを感じたことはありませんか? 教えるということは、自分の知識や考え方を相手に伝えることです。それができるということは、自分がその内容をちゃんと理解している証拠でもあります。
最初は不安かもしれませんが、何度か経験を重ねるうちに、「自分にもできる」という気持ちが生まれてきます。これが自信につながります。教えることで、知識だけでなく、自分自身を信じる力も育つのです。
話し方・聞き方が上手になる
教え合う学習では、言葉で説明したり、相手の反応を見ながら話を進めたりする必要があります。「どうすればわかりやすく伝えられるか」「相手がどこでつまずいているか」を考える中で、自然とコミュニケーションの力がついていきます。
たとえば、国語の読解問題で、ある段落の意味を一緒に考えているとします。そのとき、「この言葉はこういう意味じゃないかな」「ここは作者の気持ちを表しているんだと思う」と、自分の意見を伝えることになります。また、友だちの意見を聞いて、「なるほど、そんな見方もあるのか」と感じることもあります。
こうしたやりとりを通じて、話す力、聞く力、そして相手に合わせた言葉の使い方など、将来にも役立つスキルが自然と身につきます。
自分とはちがう考えを理解できるようになる
「自分とはちがう考え方」に気づく
相互教育法では、教えるだけでなく、教えてもらう側になることもあります。友だちから教えてもらったとき、自分とはちがう考え方や解き方に気づくことがあります。たとえば、数学の文章題で、自分は図を描いて解いていたけれど、友だちは表を使って整理していた、ということもあるでしょう。
このように、他の人の考え方や視点にふれることで、「いろいろなやり方があるんだな」「こんなふうにも考えられるんだ」と学ぶことができます。これは、ただ一人で学んでいるだけでは得られにくい体験です。
相手の立場で考える習慣がつく
また、教えるときにも「相手にとってどう説明すればわかりやすいか」と考えることが大切になります。「自分が理解できた方法」が必ずしも「相手にとってわかりやすい方法」とは限りません。
たとえば、理科の「てこの原理」を説明するとき、自分は数式で理解していても、相手は図や具体的な例を見ないとピンとこないかもしれません。そうしたとき、「じゃあ、ブランコで考えてみよう」と身近な例を出すことができれば、それは相手を思いやる姿勢です。
このように、相互教育法は、「相手の立場で考える力」を育ててくれます。この力は、将来、人間関係や社会でのコミュニケーションにおいて、とても重要なものになります。
学習のモチベーションが上がる
仲間と一緒だから頑張れる
勉強はときに「面倒だな」「やる気が出ないな」と感じることもあるかもしれません。でも、友だちと一緒に取り組むことで、やる気が出てくることがあります。これは、相互教育法の大きなメリットのひとつです。
たとえば、次の日にある理科の小テストのために、友だちと一緒に問題を出し合って勉強したとしましょう。一人だったら「まあ、いいか」と思っていた内容でも、「相手に間違えないように説明しなきゃ」と思うと、しっかり復習するようになります。
また、教えてもらったことが「なるほど!わかった!」となると、うれしい気持ちになりますし、自分も誰かに教えてみたいと思えるようになります。こうした前向きな気持ちは、学習を続ける原動力になります。
小さな成功体験がやる気を引き出す
教え合いの中では、「相手がわかってくれた」「うまく説明できた」という小さな成功体験を積み重ねることができます。このような成功体験は、「もっと頑張ろう」という気持ちを引き出してくれます。
また、友だちから「ありがとう」「わかりやすかった」と言われたときのうれしさは、学習へのモチベーションをさらに高めてくれます。このような前向きな気持ちは、勉強だけでなく、学校生活全体にも良い影響をもたらします。
人と仲よくしたり、協力できるようになる
チームで学ぶ力が身につく
社会に出ると、「一人だけで働く」ことはほとんどありません。会社や地域、家庭など、さまざまな場面で「誰かと協力する力=協調性」が求められます。
相互教育法では、学ぶ人同士がペアになったり、グループになったりして活動するため、自然と「チームで学ぶ力」が育ちます。たとえば、グループで歴史の出来事をまとめて発表する課題があるとします。役割分担をしたり、話し合って意見をまとめたりする中で、お互いに意見を尊重し合いながら進めることが求められます。
人間関係のトラブルを減らす
人と関わる力が身についていれば、ちょっとした意見の違いがあっても冷静に対応することができるようになります。「自分とはちがう考えも大切にする」「相手の話を最後まで聞く」「間違いを指摘するときは相手を傷つけないように言う」といった態度は、相互教育法の中で自然と育まれていきます。
こうした力は、人間関係のトラブルを減らし、よりよい関係を築くためにとても大切です。
このように、相互教育法には「理解が深まる」「自信が育つ」「人の気持ちがわかるようになる」「やる気が出る」「社会で役立つ力が身につく」といった、たくさんのメリットがあります。ただの勉強法ではなく、人として成長するためのとても有効な方法なのです。
どんな場面で使える?相互教育法の活用シーン
相互教育法(Peer Teaching)は、「友だち同士で教え合う」「学んだことを人に説明する」といった学習スタイルのことです。この方法は、特別な場所や時間を用意しなくても、日常の勉強の中で自然に取り入れることができます。
この章では、「いつ、どんな場面で相互教育法を使うと効果的なのか」を具体的に見ていきましょう。定期テストの前や、英単語や漢字の暗記、数学の問題の説明、理科や社会の用語の理解、授業の復習など、いろいろな場面での活用方法について、わかりやすく紹介していきます。
定期テスト前の対策に使おう
「教えること」が最高の復習になる
定期テストが近づくと、「どうやって復習すればいいのかわからない」という声をよく聞きます。そんなときにおすすめなのが、相互教育法です。友だちに教えることで、自分の理解があいまいな部分がはっきりわかります。
たとえば、理科の「電流と電圧」の単元をテスト勉強するとき、ただ教科書を読むだけでなく、友だちに「この図はこういう仕組みなんだよ」と説明してみましょう。途中でうまく言葉が出てこなかったり、「あれ、なんでそうなるんだっけ?」とつまづいたりしたら、そこが自分の弱点だと気づけます。
テスト対策グループで力を合わせる
数人でグループを作り、お互いに問題を出し合うのもおすすめです。たとえば、社会の歴史で「鎌倉幕府のしくみ」について一人が説明し、他のメンバーが質問するという形式です。質問に答えるために、自分の知識を総動員することになります。これによって、より深く記憶に残るのです。
このようにしておくと、テスト当日には「そういえば昨日、友だちにこんなふうに説明したな」と思い出しやすくなります。
英単語や漢字などの暗記学習に活用する
クイズ形式で楽しく覚える
英単語や漢字を覚えるとき、「ただノートに書くだけ」では退屈になってしまうことがあります。そんなときは、友だちとクイズ形式で問題を出し合ってみましょう。
たとえば英語なら、「“important”ってどういう意味?」と聞き合うだけでなく、「“important”を使って例文を作ってみて」と出題を工夫することで、意味だけでなく使い方も覚えることができます。漢字でも「この漢字の部首は?」「書き順はどうだった?」といった質問ができます。
相手のミスから学ぶこともできる
人は自分の間違いだけでなく、他人の間違いからも学べます。たとえば、友だちが「“勉強”の“勉”って“べん”じゃなくて“べんきょう”の“きょう”だよね」とうっかり言ってしまったとします。その場で正しく説明すれば、自分自身の記憶も強くなります。
また、相手に説明することで、「この部分は意外とみんな間違いやすいんだな」と気づくこともできます。それは自分が暗記のポイントをつかむヒントになります。
数学の解法説明に使える
考え方を言葉にする練習になる
数学は答えを出すだけでなく、「どうやってその答えにたどり着いたのか」が大切です。友だちに解き方を説明することは、その「考え方の言語化」の練習になります。
たとえば「一次方程式の解き方」を説明するとき、「まずxのついていない数字を右辺に移すでしょ。そのとき符号が変わるんだよ」といったように、手順を言葉にします。これによって、自分の思考が整理され、似たような問題が出ても応用がきくようになります。
解き方の違いから学び合う
同じ問題でも、人によって解き方が違うことがあります。たとえば「(3x+2)÷(x+1)」のような式をどう簡単にするか、という場面では、「先に分配法則を使ったほうがいい」と考える人もいれば、「一度展開してから整理する」と考える人もいます。
こうした違いを話し合うことで、「そんな方法もあるのか!」と新しい視点を得ることができます。数学は一つの答えにたどり着く道がいくつもある教科だからこそ、相互教育法が特に効果的なのです。
理科や社会の用語解説に活用する
自分の言葉で説明すると記憶に残る
理科や社会は、専門用語が多くて覚えるのがたいへんな教科です。「溶解」「浸透圧」「鎖国」「参勤交代」など、聞きなれない言葉がたくさん出てきます。
こうした用語を覚えるには、自分の言葉で説明してみるのが効果的です。たとえば「参勤交代っていうのは、大名が1年ごとに江戸と自分の領地を行き来しないといけなかった制度で、江戸幕府が力を保つためにやってたんだよ」といったふうに説明します。
教科書の文章をただ読むよりも、自分の言葉に変えて話すことで、内容が頭にしっかり残ります。
身近な例と結びつけて覚える
説明のときには、できるだけ身近な例と結びつけるとさらに効果的です。たとえば理科の「水の状態変化(気体→液体→固体)」を説明するとき、「お風呂からあがったあとに鏡がくもるのは、湯気(気体)が冷えて水滴(液体)になるからだよ」と話せば、現実の生活と結びついて理解しやすくなります。
こうした工夫をしながら教え合うと、自分も相手も、単なる暗記ではなく、意味のある知識として覚えることができるのです。
授業の復習や家庭学習で日常的に使える
毎日の「ちょっとした説明」が力になる
相互教育法は、テスト前だけに使うものではありません。むしろ、毎日の授業の復習の中でこそ、本当の力を発揮します。
たとえば家に帰ってから、「今日の社会で習ったことを3分で説明する」といった習慣をつけるだけでも、大きな効果があります。家族に向かって話してもいいですし、友だちとLINEや通話で教え合ってもかまいません。
説明しようとすると、「うまく言えないところ」が出てきます。それが、自分がまだ理解できていない部分なのです。そこをもう一度教科書で調べて補えば、知識がどんどん確かなものになっていきます。
家庭学習でも「教える場面」を作る
家庭学習で相互教育法を使うには、ちょっとした工夫が必要です。たとえば、兄弟や親に「5分だけ聞いて」とお願いして説明してみることです。家族が「それってどういう意味?」と質問してくれれば、説明の力もついていきます。
また、スマートフォンの録音機能を使って、自分が説明している声を録音するのもよい方法です。あとで聞き直すと、「あ、この部分がわかりにくいな」と自分の説明を客観的にふり返ることができます。
おわりに
相互教育法は、特別な教材や教室がなくても、毎日の勉強の中に取り入れられる強力な学習法です。定期テストの前も、普段の授業のあとも、友だちと教え合ったり、自分で説明したりすることで、学んだことが「自分のもの」になります。
何かを「人に教える」ことで、理解が深まり、自信がつき、学ぶことがもっと楽しくなっていきます。まずは、小さな一歩からはじめてみましょう。きっと、学びの世界が広がっていくはずです。
今日からできる!実践ステップ:相互教育法 のやり方
はじめに:誰でもできる相互教育法
これまでの章で、「相互教育法(Peer Teaching)」の考え方や、その効果、活用できる場面などについて学んできました。この章では、実際にあなたが相互教育法を始めるとき、どのようなステップで進めればいいのかを、わかりやすく説明していきます。
「相手に教える」というと、なんだか難しそうに聞こえるかもしれません。でも、特別な道具や才能が必要なわけではありません。大切なのは、相手のことを思いやる気持ちと、自分も学びたいという意欲です。
ここでは、「Step 1」から「Step 5」まで、段階的に相互教育法を実践する方法を紹介します。ぜひ、クラスメートや兄弟姉妹、あるいは家庭教師との勉強時間に取り入れてみてください。
Step 1:ペアやグループを決める
気軽に始められる相手を選ぼう
相互教育法の最初のステップは、一緒に学ぶ「ペア」や「グループ」を決めることです。相手は、必ずしも勉強が得意な人でなくても構いません。むしろ、おたがいの理解を助け合えることが大切です。
たとえば、次のような相手が考えられます。
- 学校の友達
- 放課後の勉強会メンバー
- 兄弟や姉妹
- 家庭教師と生徒
- オンラインでつながる仲間
「同じ教科でつまずいている友達」と協力し合えば、お互いに励ましながら取り組むことができます。また、レベルに差がある場合でも、教える側の人も自分の理解を深められるので、どちらにもメリットがあります。
レベルの違いは気にしすぎない
「自分はまだよくわかっていないから、人に教えるなんてムリ」と思うかもしれません。しかし、実はそれこそが学ぶチャンスです。相手に教える過程で、自分の理解のあいまいな部分に気づくことができます。
たとえば、「地球の公転と自転のちがい」を説明しようとして、「あれ、自転ってどっちだっけ?」と気づくことがあります。そのとき、改めて調べ直すことで、記憶がより確かになります。
レベルの差は気にせず、「いっしょに学ぼう」という姿勢を大切にしましょう。
Step 2:役割を決めてスタート(教える人/聞く人)
最初は役割を分けてみよう
ペアやグループが決まったら、次は「教える人」と「聞く人」の役割を決めます。最初から両方をいっぺんにやろうとすると、やりにくいことがあります。まずは役割を分けて、集中して進めてみましょう。
たとえば、英単語の学習ではこんなやり方ができます。
- 教える人が、単語の意味と使い方を説明する
- 聞く人が、わからないところを質問する
- 一定時間(10分など)がたったら、役割を交代する
こうすることで、教える側も聞く側も、どちらの立場も体験することができます。
「説明」「質問」「復唱」の三つの柱
相互教育法でとても大切な方法が、この三つです。
- 説明する:自分の言葉で内容を説明します。
- 質問する:相手がどれだけ理解できたか、質問してみます。
- 復唱させる:聞いた相手に「じゃあ、もう一回説明してみて」と言ってもらいましょう。
たとえば、理科の「光の反射」について説明するとき、

光は、鏡などのつるつるした面で、入ってきた角度と出ていく角度が同じになるよ。

それって、入ってきた角度が30度なら、出ていくのも30度ってこと?

そうそう。じゃあ、もう一回、どういうルールだったか説明してみて。

鏡にあたった光は、入った角度と同じ角度で反射する、ってことかな?
こんなやりとりで、おたがいの理解がどんどん深まります。
Step 3:教える内容を準備する
教える前に「整理」がカギ
相手に何かを教える前に、まずは自分の頭の中で「何を、どう説明するか」を整理しておくことが大切です。これは、自分の学習にもとても役立ちます。
たとえば、社会の歴史で「江戸時代の三大改革」を説明したい場合、まず次のようにまとめておきます。
- 享保の改革:徳川吉宗が行った。目安箱や公事方御定書など。
- 寛政の改革:松平定信。倹約や朱子学の重視。
- 天保の改革:水野忠邦。上知令など。
さらに、それぞれの改革の目的や、成功・失敗のポイントも整理しておくと、説明がわかりやすくなります。
ノート・図・クイズなどを活用しよう
教えるときに、ただ話すだけでは相手に伝わりにくいことがあります。そんなときは、次のような道具を使うと効果的です。
- ノートにまとめた内容を見せる
- 簡単な図や表をかく
- 自作のクイズを出してみる
- スライドやカードを作る
たとえば、数学の「一次関数」では、グラフを手書きでかいて、どうして直線になるのかを見せると、視覚的に理解しやすくなります。
Step 4:実際に教え合ってみよう
自分の言葉で説明してみる
いよいよ、実際に相互教育法をやってみる時間です。ここで大事なのは、「教科書の文章をそのまま読む」ことではなく、自分の言葉で説明することです。
たとえば、英語で “I have a pen.” を説明するとき、「『私はペンを持っています』という意味です」と言うだけでなく、
「この ‘have’ っていう動詞は、持っているときにも使うし、飼っているときにも使うよ。たとえば ‘I have a dog.’ って言えば『犬を飼ってる』ってことになるんだよ」と、例を交えて話すと、相手も覚えやすくなります。
相手の理解を確かめよう
一方通行の説明では、うまく伝わらないこともあります。相手がちゃんと理解できたかどうかを、途中で確認することが大切です。
たとえば、
- 「ここまでで、わからないところある?」
- 「じゃあ、この問題やってみて」
- 「これって、どういう意味だったっけ?」
といった問いかけを入れることで、相手の反応を見ながら進められます。
Step 5:振り返りと改善
フィードバックを受け取ろう
相互教育法が終わったら、おたがいに振り返りの時間をとりましょう。特に、「教える側」にとって、相手からの感想はとても貴重です。
- 「この説明はわかりやすかった」
- 「ちょっと早すぎてついていけなかった」
- 「図を使ってくれたところがよかった」
こうしたフィードバックは、自分の説明のどこを改善すればよいかを知るヒントになります。
自分の理解のあいまいさに気づける
また、説明しながら「ここ、自分でもよくわかってなかったかも」と気づくことがあります。これは、自分の理解を見直すよいチャンスです。
たとえば、「酸とアルカリのちがい」を説明しようとしたとき、リトマス紙の変化はわかるけど、「なぜそうなるのか?」の仕組みまでは説明できなかった、ということがあります。
そんなときは、いったん自分で調べ直して、もう一度説明してみましょう。きっと、前より深く理解できるようになります。
- Step 1ペアやグループを決める
- Step 2役割を決めてスタート(教える人/聞く人)
- Step 3教える内容を準備する
- Step 4実際に教え合ってみよう
- Step 5振り返りと改善
おわりに:相互教育法は誰でも始められる学習法
ここまで読んでみて、相互教育法は特別な才能や準備がなくても、今日から始められる学習法だということがわかったと思います。大切なのは、「一緒に学ぶ姿勢」と「相手を思いやる気持ち」です。
誰かに教えることで、自分の知識がより深くなり、学ぶ楽しさを実感できるようになります。ぜひ、身近な人といっしょに、相互教育法にチャレンジしてみてください。
次の章では、「相互教育法が特に効果的なタイプの子」や、「どんな子に向いているのか」について、さらに詳しく見ていきます。あなた自身や、周りの友達の学びに役立てていきましょう。
よくある疑問と対処法
はじめに:不安はあって当然です
「相互教育法(Peer Teaching)」は、自分が学んだことを他の人に教えることで、理解を深める学習方法です。このやり方はとても効果的ですが、はじめて実践しようとすると、いろいろな不安が出てくるものです。
たとえば、
- 「自分はまだしっかり理解できていないのに、人に教えていいのかな?」
- 「もし間違ったことを教えてしまったらどうしよう?」
- 「うまく説明できなかったら相手に迷惑がかかるんじゃないか?」
このように思うのは、ごく自然なことです。この章では、よくある不安や疑問にひとつずつ向き合いながら、どう考えればよいか、どう行動すれば安心して取り組めるかを一緒に考えていきましょう。
自分はまだ理解できていないのに、人に教えて大丈夫?
教えることで、むしろ深く理解できる
多くの人が「自分がよくわかっていないのに教えていいの?」と思ってしまいます。でも、実は「教えること」そのものが、理解を深める強力な方法なのです。
たとえば、理科の授業で「光の屈折」について習ったとします。まだあまり自信がない状態で、友達に説明しようとすると、「なぜ光は曲がるのか?」という根本的な部分が気になってくるかもしれません。そして、説明するために教科書を読み直したり、図を描いて考えたりするようになります。このプロセスそのものが、学びを深めてくれるのです。
アメリカの教育学者フィンマンは、「本当に理解したいなら、それを誰かに教えてみなさい」と言いました。理解があいまいな部分は、説明しようとしたときにすぐに分かってしまうからです。
「完全な理解」でなくてもよい
もちろん、すべてを完璧に理解している必要はありません。大切なのは「わかったところまでを自分の言葉で伝えてみること」です。そして、もし教えている途中で「ここ、実は自信がないんだ」と気づいたら、それは成長のチャンスです。
教えている相手に「ここは一緒に調べてみよう」と言えば、むしろ一緒に学ぶよい機会になります。教えることは、先生のようにすべてを知っている必要はありません。自分なりに理解している部分を共有する、という気持ちで取り組めばよいのです。
間違ったことを教えそうで不安
間違いを恐れすぎないことが大切
「間違ったことを教えたらどうしよう」と心配になるのは、とてもまじめな証拠です。でも、間違えることは悪いことではありません。むしろ、間違いから学べることのほうが多いのです。
たとえば、英語の文法で「He go to school.」と教えてしまったとしましょう。本当は「He goes to school.」が正しいのですが、もし聞いていた友達が「それって本当に正しい?」と気づいてくれたら、一緒に確認して正しい表現に直すことができます。
このように、「間違ったらすぐに修正できる」ことが、相互教育法の良いところでもあります。ふたり以上で学ぶからこそ、お互いに助け合えるのです。
「確認する習慣」をつけよう
不安を減らすためには、「確認する習慣」をつけることが大切です。
たとえば、教える前に教科書をもう一度読んでみる、参考書やノートを見直す、自分なりにまとめたノートを使って説明する、などの工夫ができます。また、ネット上で信頼できる教育サイト(たとえばNHK for Schoolや文部科学省の教材など)を活用するのもよい方法です。
さらに、「わからないところは素直に『わからない』と言う」こともとても大事です。無理に知っているふりをするよりも、「ここはちょっと調べてみるね」と伝えるほうが、信頼されます。
相手にうまく伝わらないときはどうする?
相手に合わせた説明をしよう
相互教育法は、一方通行の講義ではありません。相手の理解度や興味に合わせて、説明の仕方を工夫することが大切です。
たとえば、数学で「一次関数」のグラフの意味を説明するとき、相手がグラフに苦手意識を持っているなら、「実際の生活に例えるとどうなるか」を話してみるのもよい方法です。「この直線は、時間がたつほど水が減る水道タンクのようなものだよ」といったように、イメージしやすい例えを使うことで、伝わりやすくなります。
また、図やスライド、紙のメモを使って視覚的に説明するのも効果的です。中学生の学びでは、「言葉だけ」より「見てわかる」情報がある方が理解が進みます。
質問を受け入れよう
もし相手が「よくわからない」と言ってきたときは、落ち込む必要はまったくありません。むしろ「どの部分がわかりにくかった?」と聞いて、相手の考えを聞きましょう。そして、別の言い方で説明し直したり、図や例を使って説明してみたりしてみましょう。
説明がうまく伝わらないときは、自分の言い方がまだ工夫できるというサインでもあります。何度かくり返すうちに、どんな言い方をすれば相手に伝わるのか、自分自身も分かってきます。
安心して実践するための心構え
完璧を目指さないこと
相互教育法をはじめるときに大事なのは、「完璧を目指さない」ことです。最初からうまく教えられる人は、ほとんどいません。むしろ、「少しずつ慣れていこう」「少しでも理解が深まればOK」という気持ちでスタートすることが、長く続けるコツです。
間違えることを恐れず、失敗を学びのチャンスに変えることが、成長につながります。
お互いを尊重する気持ちを忘れない
教える側も、教えられる側も、お互いを大切にする気持ちを持ちましょう。相手が間違っていたときには、否定するのではなく、「こういう考え方もあるよ」とやさしく伝えることが大切です。
また、自分が教える立場に立ったときも、「相手のために話している」という意識を持ちましょう。そうすることで、教えることが単なる作業ではなく、相手との信頼関係を深める学びの時間になります。
まとめ:不安を超えた先にある学びの深さ
相互教育法を始めるとき、いろいろな不安や疑問が出てくるのは当然のことです。でも、それらの気持ちとしっかり向き合って、一歩ずつ実践していけば、確実に力がついてきます。
教えることで自分の理解が深まり、相手との関係もよくなり、学ぶこと自体が楽しくなってきます。
大切なのは、
- 完璧を求めすぎず、
- お互いを思いやり、
- 少しずつ成長するつもりで続けていくこと
です。
相互教育法は、「自分のためにも、相手のためにもなる」学習方法です。最初の不安を乗り越えた先には、新しい発見や成長が待っています。自信を持って、ぜひ実践してみてください。
オススメの応用アイデア
この章では、「相互教育法(Peer Teaching)」をさらに楽しく、そして効果的に活用するための応用アイデアを紹介します。すでに学んだことを教え合うだけでなく、少し工夫を加えることで、学習はもっと身近で楽しいものになります。
勉強というと、机に向かって黙って問題を解くというイメージがあるかもしれません。でも、友だちや家族と関わりながら学んだり、自分だけのやり方で工夫したりすることでも、大きな学習効果を得られます。以下に紹介する方法を参考に、自分に合った学び方を見つけてみてください。
クイズ形式で問題を出し合う
なぜクイズ形式が効果的なのか
人に問題を出すためには、自分自身がその内容を理解していないといけません。クイズを作るときには、「どんな質問をすればいいか」「正解は何か」「ひっかけ問題になっていないか」などを考える必要があります。これらを考えることで、自然と内容を深く理解することができます。
また、友だちとクイズを出し合えば、ゲーム感覚で楽しく勉強できます。正解すればうれしいし、間違えても「どうしてそうなるのか」をその場で教え合うことで、理解がより深まります。
クイズの作り方と工夫
たとえば、理科の「消化の仕組み」について学んでいるとします。クイズ形式にすると、こんなふうになります。
- 質問:「胃の中で食べ物を消化するために働いている酵素は何ですか?」
- 正解:「ペプシン」
また、社会の地理ならこんな問題も考えられます。
• 質問:「日本で一番大きな湖はどこですか?」
• 正解:「琵琶湖」
さらに、選択肢をつけて四択クイズにしたり、ちょっとしたヒントを加えて難易度を調整したりすることもできます。友だちと交互にクイズを出し合い、答えたあとに解説までできるようにすると、教える力も身についていきます。
クイズ大会を開いてみよう
もし複数人のグループで勉強しているなら、「ミニクイズ大会」を開いてみましょう。順位をつけることで、やる気も高まります。ただし、勝ち負けにこだわりすぎず、あくまでも「学ぶことを楽しむ」のが目的です。間違えたときには、「なぜその選択肢を選んだのか?」を話し合う時間を設けましょう。
ミニ授業ごっこで説明力アップ
「ミニ授業」とは?
ミニ授業とは、先生になったつもりで、友だちや家族に向けて短い授業をすることです。ホワイトボードや紙、パソコンのスライドなどを使って、説明したい内容をまとめ、話す練習をします。これを行うことで、「どこが大事なのか」「どこでつまずきやすいのか」が自分でもはっきりわかるようになります。
ミニ授業の準備の仕方
たとえば、英語の文法「現在進行形」を教えるときは、以下のように準備します。
- タイトル:「現在進行形ってなに?」
- 目標:「〜しているところ、という意味の文を作れるようにする」
- 説明の流れ:
be動詞+動詞のing形が基本
例文:「I am studying English.」
よくある間違い:「I studying English.」→be動詞が抜けている!
このように、順を追って説明する構成を考えることが大切です。図や絵を使って説明すれば、聞く側にもわかりやすくなります。話す練習を何回もくり返すことで、自然と説明力がついていきます。
発表後のふり返りが大事
ミニ授業をしたら、必ず自分の発表をふり返りましょう。次のようなポイントでチェックします。
- 伝えたいことはちゃんと伝わったか?
- 相手は理解していたか?
- 説明に時間をかけすぎていなかったか?
また、見てくれた人から感想や質問をもらうことで、自分の説明の「弱点」や「改善点」も見つかります。
家族を相手に教えてみよう
なぜ家族がいいのか
「教える相手がいない」というときでも、家族が協力してくれることがあります。お父さんやお母さん、兄弟姉妹などに、「ちょっとだけ聞いてほしい」と声をかけてみましょう。特に年下のきょうだいは、素直に聞いてくれることが多いです。
家族に教えることで、自分が本当に理解できているかを試すことができます。もしうまく説明できなければ、「まだ自分がちゃんとわかっていないところがあるんだな」と気づくチャンスになります。
実際のやりとりの例
たとえば、数学の「比例と反比例」を教えるとき、次のような会話が考えられます。

たとえば、ジュース1本100円で売ってたら、2本でいくらになると思う?

200円?

そうそう、それが比例っていう関係なんだ。数が2倍になれば、金額も2倍になる関係なんだよ。
このように、身近な例を使って教えると、相手も理解しやすくなります。教える自分も、「具体的な説明をする力」が身につきます。
おうちの人に質問してもらう
説明したあとには、家族に「わからないところがあった?」と聞いてみましょう。わからないと言われたら、「どうすればもっとわかりやすく伝えられるか」を一緒に考えるのです。教えながら学べる、最高のチャンスです。
自分だけの授業動画をつくる
動画づくりのすすめ
最近では、スマートフォンやタブレットを使って、簡単に動画を撮ることができます。自分の説明を動画に撮ることで、「どこがわかりやすく話せているか」「どこが聞き取りにくいか」をあとで確認できます。
また、動画づくりには「話の流れを考える」「必要な資料を準備する」などのステップが必要です。これによって、学習内容をしっかり整理する力も身につきます。
撮影のしかたと工夫
たとえば、社会の歴史で「明治維新」を説明する動画を作るなら、こんな準備をします。
- 台本を書く(説明の順番と内容を決める)
- 写真や地図を印刷したり、画面に表示したりする
- 自分が話す姿をスマホで録画する
話すときには、「聞く人がその時代のことを知らない」という前提で、やさしく、ゆっくり話しましょう。必要なら、ジェスチャーや指さしなどの動きをつけると、よりわかりやすくなります。
動画をふり返って改善する
撮影した動画は、自分で見返してみましょう。話すスピード、声の大きさ、言葉の使い方などをチェックします。また、友だちや先生に見てもらって、感想やアドバイスをもらうのもよい方法です。
動画はくり返し撮り直せるので、「一度やって終わり」ではなく、「次はもっとよくする」気持ちで挑戦しましょう。
おわりに:学びのスタイルを楽しもう
ここまで紹介してきたように、相互教育法は「ただ教えるだけ」の方法ではありません。クイズ形式、ミニ授業、家族とのやりとり、動画づくりなど、さまざまな工夫で、学びはどんどん広がっていきます。
一番大切なのは、「楽しみながら学ぶ」ことです。楽しいと感じれば、もっと深く学びたくなるし、やる気も続きます。ぜひ、今回紹介した方法を試しながら、自分なりの「教える学び方」を見つけていってください。学ぶこと、そして教えることは、どちらも自分自身を成長させてくれる素敵な方法なのです。
おわりに:今日からできる一歩
学ぶことに「ゴール」はない
勉強というと、「テストでいい点をとること」や「受験に合格すること」など、はっきりとしたゴールを思い浮かべるかもしれません。でも、学ぶということは、実はもっと長い旅のようなものです。一つのことを覚えても、次にはそれを使って考える力が必要になったり、さらに深く理解する必要が出てきたりします。
だからこそ、毎日の小さな学びを大切にしながら、一歩ずつ進んでいくことがとても大事です。この章では、「明日から」ではなく「今日から」できる、ほんの小さな一歩について考えていきましょう。
小さなことから始めよう
勉強の中で「誰かに教える」ことを始めようと思っても、最初から完璧にできる必要はありません。むしろ、大きなことから始めようとすると、不安になって動けなくなってしまうこともあります。
昨日習ったことを説明してみる
たとえば、昨日の授業で習ったことの中から、一つだけ選んでみましょう。「理科の実験で水が蒸発する理由を知った」「英語の文法で ‘can’ の使い方を学んだ」「歴史の授業で平安時代の文化について聞いた」など、どんな内容でもかまいません。
その一つのことを、家族や友だちに説明してみるのです。話す相手がいなければ、自分で声に出して説明してみたり、ノートにまとめてみたりしてもOKです。大切なのは、「自分の言葉で話す」ということ。自分の中で理解したことを、他の人にもわかるように言いかえてみることで、本当にその内容をわかっているかどうかが見えてきます。
「うまく言えなかった」はチャンス
もし説明してみて「なんだかうまく言えなかったな」と思ったら、それは失敗ではなく、大きなチャンスです。うまく言えなかったところが、自分の理解があいまいな部分だからです。そこをもう一度教科書で読みなおしたり、先生や友だちに聞いたりすると、ぐっと理解が深まります。
このように、「教えること」は「自分がどこまで理解しているかを知る方法」でもあるのです。
教えることは、自分の学びを育てること
教えるというと、「先生がすること」「知識がある人がすること」と思われがちです。でも、実は誰にでもできることです。そして、それをやることで自分自身の学びがぐんと成長するのです。
教えることで見える「学びの深さ」
たとえば、数学の「割合」の計算について、ただ公式を覚えて問題を解くだけでは、「なんとなくできたけど、理由はよくわからない」ということがあります。でも、それを人に教えようとすると、「なぜこの式になるのか」「この数字は何を意味しているのか」をはっきりさせる必要があります。
教えることで、「ああ、こういう意味だったんだ」と自分の中でも理解が深まり、知識がしっかりと定着していきます。
まちがえることも大事なステップ
「もし間違ったことを教えてしまったらどうしよう」と心配になる人もいるかもしれません。でも、まちがえることは悪いことではありません。間違いに気づいたとき、そこから新しい学びが生まれます。
たとえば、「月の満ち欠けは、地球の影で起きている」と教えてしまったとします。でも、あとでそれがちがうことに気づき、「じゃあ、本当はどうして月の形が変わるんだろう?」と調べてみたら、それが太陽の光と月の位置関係によるものだとわかります。こうした経験が、自分の学びをぐっと深くしてくれるのです。
ひとりより、だれかと一緒に学ぶと広がる世界
勉強は一人ですることもできます。でも、「だれかと一緒に学ぶ」と、それまで見えていなかったことが見えてくることがあります。
「そうだったのか!」が増える学び方
たとえば、同じ英語の文章を読んでいても、自分とはちがう意味にとらえていた友だちがいたとします。その友だちの説明を聞いて、「そうだったのか!」と気づくこともあります。また、友だちから質問を受けて、「そんなこと考えたことなかった!」と自分の考えが広がることもあります。
こうしたやりとりを通じて、知識だけでなく「考える力」も育っていきます。
仲間がいると続けやすい
また、勉強を続けるには「やる気」を保つことも大切です。でも、一人でやっていると、ついさぼってしまったり、あきらめてしまったりすることもありますよね。
そんなとき、仲間がいると「自分もがんばろう」と思えます。たとえば、「お互いに教えあう会」を週に1回やってみたり、「今日の学びを10分だけ話す時間」をつくってみたりすると、楽しく続けられます。
まとめ:一歩をふみ出すことがすべての始まり
この記事では、「相互教育法(Peer Teaching)」という学び方についてくわしく説明してきました。ポイントは、「教えることで学ぶ」というシンプルだけれどとても力のある考え方です。
いきなり難しいことをする必要はありません。今日から、次のようなことを一つでも始めてみましょう。
- 昨日の授業で習ったことを、ノートにまとめ直してみる
- 家族や友だちに「こんなことを習ったよ」と話してみる
- 自分で「ミニ授業」をしてみて、説明のしかたを考えてみる
小さな一歩が、大きな変化につながります。大事なのは、「自分でやってみる」こと。だれかと一緒に、楽しく、深く学んでいきましょう。