次のようなお悩みはありませんか。
- 家庭教師との授業が受け身になってしまい、集中力が続かない
- 家庭教師との関係が『先生と生徒』の一方的なものに感じてしまい、もっと対話的な学習をしたい
- 家庭教師の時間を最大限に活用したいが、具体的にどうすればよいかわからない
- 人に教えることで、もっと自分の理解を深めたいと思っているが、その機会がない

塾・予備校の講師、家庭教師の経験20年以上のナガクラが解決方法を紹介します。効果的な学習をしてムダをなくしましょう。
家庭教師と「相互教育法」の意外な相性
家庭教師=一方的に教えるもの?という誤解
家庭教師と聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのは、「先生が生徒に一方的に教える姿」ではないでしょうか。たとえば、家庭教師が教科書やノートを見ながら説明し、生徒はそれを聞き、うなずきながらノートを取っている――そんなイメージを持っている人は少なくありません。実際、多くの家庭教師の授業はこのようなスタイルで行われています。
しかし、このような「先生が教えて、生徒は受け取るだけ」という学び方には、限界があります。なぜなら、人はただ聞いているだけでは、なかなか理解が深まらないからです。もちろん、ていねいな説明を聞くことは大切ですが、それだけでは知識を自分のものとして使いこなすことがむずかしいのです。
たとえば、理科の授業で「光の反射」について先生の説明を聞いても、自分で鏡を使って実験したり、友だちに仕組みを説明したりしないと、本当にわかったとは言えません。ただ受け身で聞いているだけでは、わかったような気がするだけで、いざテストになると「どうだったっけ?」と頭が真っ白になってしまうこともあります。
家庭教師は、ただの「教える人」ではなく、「学びを深めるパートナー」になることができます。そのためには、家庭教師が一方的に教えるだけでなく、生徒自身が考え、説明し、質問しながら学ぶスタイル――つまり「相互教育法(Peer Teaching)」を取り入れることがとても効果的なのです。
なぜ家庭教師でも「教え合い」が可能なのか
「教え合い」と聞くと、「生徒同士で行うものでは?」と思うかもしれません。たしかに、学校でよく行われる相互教育法は、友だち同士で問題を出し合ったり、説明し合ったりする形が一般的です。しかし、家庭教師との学習でも、工夫次第で「教え合い」が可能になります。
まず、家庭教師は「先生」であると同時に、「対話の相手」でもあります。つまり、生徒が考えたことや理解したことを、家庭教師に向かって説明したり、自分なりの言葉で解説したりすることができるのです。これは、ただ問題を解いて答えを聞くだけの学習より、ずっと深い理解につながります。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
――英語の授業で、過去形の文を学んだあなた。家庭教師が例文をいくつか示したあと、「じゃあ今度は、あなたが自分で過去形の文をつくって説明してみて」と言います。あなたは、「I went to the park yesterday.」という文を作って、「’go’ の過去形は ‘went’ になるんです」と自分で説明します。家庭教師はその説明を聞きながら、「なるほど、よくできているね」と返してくれます。
このように、学んだことを自分の口で説明する時間をもつことで、知識はよりしっかりと頭に定着します。家庭教師はその説明を聞いて、必要に応じて補足したり、間違いをやさしく修正したりしてくれます。これはまさに、「教え合い」と言えるでしょう。
また、生徒が家庭教師に質問されて答えるだけでなく、「自分から説明する時間」を意識的に取り入れることで、「わかったつもり」を防ぐことができます。教える側になることで、自分の理解のあいまいな部分にも気づけるのです。
「教えることで学ぶ」相互教育法の基本原理
相互教育法(Peer Teaching)の基本には、「人に教えることで、自分の学びが深まる」という原理があります。これは、あなたも日常生活の中で体験したことがあるのではないでしょうか。
たとえば、次のような場面を思い出してください。
- 友だちに数学の問題の解き方を説明してあげたとき、「あれ、ここどう説明すればいいんだろう?」と自分の理解の不十分さに気づいた
- 理科のテスト前に友だちに「地震のP波とS波のちがいって何?」と聞かれて、うまく答えようとしたときに、改めて教科書を読み直した
- 英単語の意味を弟や妹に教えているうちに、自分でもその単語がしっかり覚えられた
このように、人に教えようとすると、自然と「ちゃんとわかっておかないと」と意識が高まります。また、説明するためには、頭の中で考えを整理する必要があります。その過程で、ぼんやりしていた知識がはっきりとした形になり、記憶にも残りやすくなるのです。
この原理は、教育心理学の研究でも明らかにされています。たとえば、アメリカの教育学者バーニス・マッカーシーは、「説明できるレベルまで理解することが、本当の学びだ」と述べています。つまり、「説明すること」そのものが、学習の一部としてとても効果的だということです。
家庭教師との学習でこの方法を取り入れると、「教えてもらう」だけでなく、「教えることで深める」という学習ができます。これは、生徒が受け身にならず、積極的に学びに参加するスタイルです。自分で説明しながら、「あ、ここはうまく言えないな」「この部分、自信がないな」と感じることもあるでしょう。でも、それこそが学びのチャンスなのです。
たとえば、次のような活動が可能です。
- 家庭教師に向かって、「今日学んだこと」を5分間で説明してみる
- 解いた問題の答えだけでなく、「なぜそうなるか」の理由を言葉にする
- 家庭教師に「生徒役」になってもらい、自分が先生になって教える
このような取り組みを通して、相互教育法のメリットを実感することができます。そして、家庭教師との関係も「先生と生徒」という固定されたものではなく、「一緒に学びを深めるパートナー」へと変わっていくのです。
家庭教師との相互教育法はこう使う
学習者→家庭教師」に教える時間を設ける
家庭教師というと、ふつうは「先生が教える」「生徒が学ぶ」という形をイメージする人が多いと思います。でも、相互教育法の考え方では、学ぶ側である「生徒」が「先生」になって教えることが、とても効果的な学習になります。
家庭教師との授業の中でも、この「学習者が先生になる時間」を意識的につくることで、ただの一方通行の授業が「双方向の学び」に変わります。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
英語の授業で、「現在進行形」について学んだあなた。家庭教師が一通り説明を終えたあとに、「では、今から3分間、私にこの内容を教えてください」と言います。あなたは「現在進行形は be動詞と~ingの形を使います。たとえば、I am studying English now. というふうになります」と説明します。
このように、「自分が説明する側」に回ることで、聞いていたときには気づかなかったあいまいな部分や、自信のなかったところが浮かび上がってきます。そして、家庭教師がその説明を聞いて、必要な補足や修正をしてくれれば、知識はより深く、正確に定着します。
ここで大切なのは、「完ぺきに教えよう」としなくていいということです。むしろ、「うまく言えなかったところ」や「説明があいまいだった部分」が見つかったときこそ、大きな学びのチャンスです。家庭教師と一緒にその部分を見直せば、「なるほど、そういうことだったのか」と納得できるはずです。
「教える時間」を取り入れるのは、5分や10分でもかまいません。大切なのは、自分の言葉で説明しようとすることです。この習慣が、理解力・表現力・記憶力のすべてを高めてくれるのです。
問題演習のあとに「自分の解法を説明」する
家庭教師との授業では、多くの場合、問題演習の時間がありますよね。たとえば数学なら、方程式の問題を解いたり、文章題に取り組んだりします。このとき、ただ「答えが合っていたかどうか」を確認するだけで終わってしまうのは、とてももったいないことです。
せっかく問題に取り組んだなら、そのあとに「自分の解き方を説明する時間」をもってみましょう。これは、まさに相互教育法の発想です。
たとえば、次のような会話を想像してみてください。
あなたが「\(3x + 2 = 11\)」という方程式を解いて、「\(x = 3\)」を導き出しました。家庭教師は、「正解です。でも、どうやってその答えにたどりついたか、説明してもらえますか?」と尋ねます。
あなたは、「まず、両辺から \(2\) を引いて \(3x = 9\) にしました。次に、両辺を \(3\) で割って \(x = 3\) にしました」と答えます。家庭教師は「とてもわかりやすい説明ですね」とコメントしてくれます。
このように、自分の解き方を言葉にすることで、解法の流れが頭の中で整理され、理解が深まります。また、説明しているときに「ん?この部分、なぜこうしたんだっけ?」と疑問が出てくることもあります。そんなときは家庭教師が一緒に考えてくれます。
さらに、家庭教師があえて「わからないフリ」をして、「どうしてここで引き算したの?」「そのときの両辺って、どんな数だった?」と質問してくれることもあります。このようなやりとりの中で、自分の説明力はどんどん磨かれていきます。
説明の練習は、どんな教科でもできます。理科の実験結果の説明、社会の歴史的な出来事の流れ、英語の文法構造……どれも「自分の言葉で説明する」ことで、よりしっかりと頭に残ります。
家庭教師が「生徒役」になって質問してみる
相互教育法をさらに深めるためには、家庭教師が「生徒役」を演じるという工夫もおすすめです。これはとてもユニークな方法ですが、学びの効果はとても高いです。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。
あなたが理科の授業で「植物の光合成」について学んだあと、家庭教師が「じゃあ私は今日、学校を休んでいた生徒という設定にするから、光合成のしくみを教えてもらってもいい?」と提案します。あなたは「光合成は植物が光と二酸化炭素と水を使って酸素と養分を作ることです」と説明を始めます。
すると家庭教師は、「どうして光が必要なの?」「葉っぱのどこでそれが起こってるの?」などと、少しずつ質問をしてきます。あなたは、教科書を見ながら答えたり、自分の言葉で説明したりします。
このように、生徒役の家庭教師が質問を投げかけてくることで、あなたは「説明する」「答える」ことを通して、より深く考えることになります。まるで本当の先生のように、相手の理解を気にしながら話す必要があるため、自然と頭の中で情報を整理する力がついていくのです。
最初は少し緊張するかもしれませんが、これはとても楽しい学習方法でもあります。家庭教師との関係がフラットになり、授業がもっと対話的になります。自分の説明に対して「なるほど、そういうことなんだ!」とリアクションが返ってくると、達成感も得られます。
このように、家庭教師が「生徒役」になってくれる時間は、学びをより深く、楽しくするための大切なチャンスです。
「今日の内容を5分で教えてみよう」チャレンジ
家庭教師との授業の最後に、「5分チャレンジ」として、今日学んだ内容をまとめて説明する時間をもつことも、とても効果的な方法です。
これは、授業の終わりに「今日やったことを、自分の言葉でまとめて説明する」という取り組みです。いわば、1日の学びを「自分の中に落とし込む」ための確認タイムです。
たとえば、社会の授業で「鎌倉時代」について学んだ日には、こんな感じになります。

「今日は鎌倉時代について学びました。鎌倉幕府を開いたのは源頼朝で、武士の政権が始まりました。御家人という家来たちは、戦で活躍すると土地をもらえる仕組みでした。元寇という外国からの攻撃があったけれど、そのあとごほうびがもらえなかったので、不満がたまりました……」

「とてもよくまとまっていますね!その御恩と奉公の仕組みは、どんな役割があったのかも教えてくれる?」
このように、自分の中で情報を整理して話すことで、学んだ内容を再確認できます。そして、説明している中で「うまく話せないところ」や「言葉が出てこない部分」があれば、そこを家庭教師と一緒に見直すことができます。
この5分チャレンジは、すべての教科に応用できます。国語の授業では読んだ文章の要約をする。数学の授業では新しく学んだ公式の使い方を話す。英語ではその日の文法ポイントと例文を紹介する。毎回の授業の終わりに取り入れることで、学習内容の記憶がぐっと強くなります。
そして、このチャレンジを続けていると、「話す力」「まとめる力」「伝える力」など、さまざまな力が自然と身についていきます。それは、受験やテストだけでなく、将来人に何かを説明する場面でも大いに役立つスキルです。
まとめ
家庭教師との授業でも、相互教育法はさまざまな形で取り入れることができます。ただ教わるだけでなく、自分が教える時間をもつこと、説明する力を育てること、それが深い学びにつながります。
- 自分の言葉で説明する時間を持つ
- 問題の解き方を言葉にしてみる
- 家庭教師に「生徒役」になってもらう
- 毎回の授業の終わりに5分まとめチャレンジをする
これらの工夫を通して、家庭教師との時間はもっと有意義なものになります。「教え合う」ことで、お互いに学びが深まる――それが相互教育法の魅力です。
家庭教師を「教えるパートナー」に変える方法
家庭教師といえば、「先生が教える」「生徒が教わる」という形を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、学びの本質は「受け身」ではなく「自ら考えて、言葉にし、確かめること」にあります。だからこそ、家庭教師をただの「説明する人」ではなく、「一緒に学ぶパートナー」として関わることが、学力向上のカギになるのです。
この章では、家庭教師を「教えるパートナー」に変えるための具体的な方法を3つ紹介します。「ただ教えてもらう」から、「一緒に問い、考え、振り返る」学びへと進化させましょう。
家庭教師に「ただ教える」以上の役割を依頼する
教えるだけの家庭教師ではもったいない
家庭教師との時間は、あなたのためだけにある特別な学習時間です。その時間を、ただ問題の解き方を教えてもらうだけで終わらせていませんか?
もちろん、わからないことを説明してもらうのは大事です。でも、それだけだと、学びは深まりません。むしろ、受け身のままになってしまって、「そのときはわかった気がしたけど、自分でやったらできなかった……」ということが起こりやすくなります。
家庭教師は、あなたに合わせて教えてくれる存在です。だからこそ、「教える」こと以外の役割もお願いしてみましょう。
「確認する人」「考える手助けをする人」に
たとえば、こんなふうに頼んでみてください。
- 「私が解き方を説明するので、間違っていたら止めてください」
- 「この問題、どう考えたらいいか一緒に整理してもらえますか?」
- 「今日の授業の最後に、理解できたかチェックしてほしいです」
こうした頼み方をすると、家庭教師はただ答えを教えるのではなく、あなたの思考を見守り、必要なときにだけサポートしてくれる存在になります。これはまさに、「教えるパートナー」としての関わり方です。
具体例:理科の記述問題で
たとえば理科で、「金属が熱を伝えやすいのはなぜか」という記述問題が出たとします。

えーっと、金属は熱を伝えるのが早いです……えーっと……

その先、どう考えましたか?

うーん……中に電子があるから?

おっ、いいね。自由電子のことを言ってるんだね。それがどう熱と関係しているかを、言葉にしてみようか。
このように、生徒さんの考えを引き出しながら、必要に応じてヒントを出す家庭教師とのやり取りが、「思考力」をぐんぐん育てていきます。
「問いかけ」と「ふり返り」を意識した指導依頼
よい質問が、よい学びを生む
授業中に家庭教師が問いかけてくれると、「あ、これってどういうことだろう?」と考えるきっかけになります。たとえば、「この式って、どんな意味があるの?」「この人物がこう行動した理由は何だと思う?」といった問いかけです。
このような質問は、ただ知識を受け取るだけではなく、「自分の頭で考えて理解する」力を伸ばします。
ここで、生徒さんのほうからも、家庭教師に次のように頼んでみてはいかがでしょうか。
- 「今日の授業中、わたしに何回か質問してください」
- 「自分で説明したあとに、理解度を確認する質問をしてもらえますか?」
これらの依頼は、家庭教師とのやりとりをもっと深く、対話的なものにします。
具体例:歴史の「問いかけ」
たとえば、歴史の授業で「織田信長が行った政策」について学んだとします。そこで家庭教師がこんな問いを投げかけます。

信長は楽市楽座(らくいちらくざ)という政策をとりました。それって、どんな目的があったと思う?

商売を自由にするため……?

うん、どうしてそれが必要だったのかな?当時の社会のようすと関係あるかもしれないね。
こうした問いかけに答えることで、ただ年号や名前を覚えるだけではなく、「なぜそうしたのか」「どんな意味があるのか」を深く考えることができます。
ふり返りで、学びを「自分のもの」にする
授業の終わりには、ふり返りの時間を取りましょう。家庭教師に、「今日の学習で一番わかったことと、一番迷ったことを聞いてください」と頼んでみてください。
このふり返りは、記憶の定着にとても効果があります。「今日の一番の収穫は何だったか?」「どこがまだモヤモヤしているか?」を自分で考えることで、学びは整理され、次の学習につながります。
教わったことを他人に教えるシミュレーション
「教えるつもりで学ぶ」と記憶が深まる
ある研究では、「誰かに教えるつもりで勉強した人は、そうでない人よりも内容をよく覚えていた」という結果が出ています。なぜなら、「教える」という行為には、「理解する」「整理する」「言葉にする」「相手に合わせて話す」という多くの思考が必要だからです。
そこで、家庭教師との学習の中で、「教えるシミュレーション」をしてみましょう。たとえば、こういった設定で学習をしてみます。
- 「明日、友だちにこの内容を説明するつもりで学ぶ」
- 「先生役になって、家庭教師を相手に10分間のミニ授業をする」
- 「黒板やノートに図を使って説明する練習をする」
こうしたシミュレーションは、ただ内容を暗記するよりもずっと効果的です。
具体例:英語の文法を「教える練習」
たとえば英語の授業で、「助動詞canの使い方」を習ったとしましょう。

じゃあ今から、わたしは英語が全くわからない小学生の弟だと思ってください。canの使い方を教えてください。

えっと、canは『〜できる』って意味です。たとえば、I can swim. は『私は泳げます』っていう意味です。

なるほど!でも、どうしてswimって原形のまま使うの?

うーん……えーっと、助動詞のあとには動詞の原形がくるって、決まりがあります。
このように、誰かに教えるつもりで話すと、ただ例文を覚えるよりも、文のしくみやルールまで理解できるようになります。そして、家庭教師がうまく質問をしてくれることで、理解はさらに深まります。
ゲーム感覚で取り入れてみよう
この「教えるシミュレーション」は、慣れてくるととても楽しくなります。家庭教師と「授業ごっこ」をしたり、「5分で説明できたらポイントゲット!」というゲーム風にしたりすれば、勉強が少し面白く感じられるようになります。
とくに理科や社会など、「説明が必要な教科」ではとても有効です。説明の練習を通して、自然と表現力や論理的な思考力も身についていきます。
まとめ
この章では、家庭教師を「教えるパートナー」に変えるための方法を3つ紹介しました。
- 「ただ教えてもらう」から、「一緒に考えてもらう」関係に変える
- 質問やふり返りを取り入れ、対話を深める
- 教えるシミュレーションを取り入れ、理解を確実なものにする
これらの方法は、すぐに実践できます。そして、どれも「学ぶ力」を本質から育てる方法です。
家庭教師との関係は、「一方的な教え・教わり」ではなく、「学び合い・高め合い」に変えていくことができます。ぜひ今日から、生徒さん自身が「学びをつくる側」になってみてください。
家庭内での相互教育法を広げるコツ
相互教育法(Peer Teaching)は、ただ学校や家庭教師との時間にだけ使えるものではありません。家の中の身近な人たちと一緒に実践することでも、大きな効果を発揮します。兄弟や親、さらには自分自身を相手にすることでも、「教えることで学ぶ」体験ができるのです。
この章では、家庭の中で相互教育法をうまく取り入れるためのコツや工夫を紹介していきます。日常の中に自然に学びのチャンスをつくる方法を、一緒に考えてみましょう。
兄弟・親に「説明する時間」をもたせる
説明する相手は「先生」じゃなくてもいい
「教える」と聞くと、多くの人は「先生のように教えられるほどの知識が必要」と感じてしまうかもしれません。しかし、相手が先生である必要はありません。むしろ、兄弟やお父さん・お母さんのように、ふだんの生活の中で関わっている人たちが相手だからこそ、気軽に説明する練習ができるのです。
たとえば、学校で習った「一次関数」のグラフについて、弟や妹に「この線はどうしてまっすぐなのか」を説明してみましょう。うまく説明できなくても大丈夫。大事なのは、自分の頭の中で「どうしてそうなるのか」を言葉にしようとすることです。その過程で、知識が頭の中で整理され、理解がより深くなります。
家族に「ちょっと聞いて!」で始めよう
家庭内で「説明する時間」をつくるには、「ちょっと聞いて!」と話しかけるところから始めるのがおすすめです。
たとえば、
- 「今日、理科で『水が蒸発する理由』を習ったんだけど、すごくおもしろかったよ!」
- 「社会の授業で『江戸時代の参勤交代』をやったんだけど、説明してみてもいい?」
こんなふうに切り出せば、相手も「どんな話だろう?」と興味をもってくれます。説明を聞く側も、まるでラジオ番組のパーソナリティの話を聞いているような感覚で楽しくなります。
「聞き手役」としての家族の力
説明するとき、相手がうなずいてくれたり、「それってどういうこと?」と質問してくれたりすると、話すほうの頭の中もさらに働きます。そうしたやり取りが、まさに相互教育法の中核となる「対話的な学び」です。
たとえば、お母さんが「え?なぜ蒸発するときに温度が上がるの?」と聞き返してくれたら、それに答えようとすることで、理屈を自分の言葉で再構築し直すことができます。これが、まさに理解を深めるプロセスなのです。
家庭教師との学習内容を家で再現する仕組み
習ったことを「もう一度説明する」
家庭教師との学習が終わった後、「今日何を習ったか」をもう一度家で説明してみましょう。ただ「今日も勉強したよ」と言うだけではなく、「三平方の定理っていうのをやったよ。例えばこういう三角形があって……」というふうに、少しずつ内容を思い出しながら話してみるのです。
このとき大事なのは、正確に覚えているかよりも、「自分の言葉で再構成して話すこと」です。
たとえば、家庭教師と一緒に「英語の不定詞」を学んだなら、
- to+動詞の原形っていう形になるんだよ。
- 『I want to play』みたいに、to playが『〜すること』っていう意味になるんだよ。
というふうに、教わった内容を例文と一緒に説明できれば、それは立派な「教える」行為になります。
「聞く係」を家族と決めておく
毎日とは言いませんが、週に1〜2回でも、家族の中で「今日はお父さんが聞き役ね」「次はお姉ちゃんに説明してみよう」といった役割を決めておくと、家の中がちょっとした教室のようになります。
もちろん、聞き手が理解できるように話すのは簡単ではありませんが、その練習を繰り返すうちに、「どうすればわかりやすく伝えられるか」を自然と考えるようになります。この思考が、学びの質を大きく高めてくれます。
動画・音声で「教える記録」を残すアイデア
スマホを使って「自分の説明」を録画する
最近は、スマートフォンやタブレットがあれば、簡単に自分の声や映像を録画できます。これを使って、自分が今日勉強したことを「5分間で説明する動画」として記録するのも、とても効果的な学習方法です。
たとえば、次のような手順で行います。
- スマホのカメラを立てる。
- 「今日は歴史の『大化の改新』について話します」と宣言する。
- ノートや教科書を見ながら、自分の言葉でポイントを説明する。
こうすることで、自分がどこまで理解できているか、どこでつまずいているかが「見える化」されます。あとで動画を見返して、「あ、この部分、ちゃんと説明できてなかったな」と気づくことで、さらに理解が深まります。
音声だけでもOK!声に出して学ぶ力
動画に抵抗がある場合は、音声だけを録音する方法もあります。たとえば、英単語の意味や発音を説明したり、数学の公式の使い方を話したりすることで、自分の理解を確認できます。
また、録音した音声を翌日聞き返すことで、復習にもなります。「昨日の自分が説明していた内容を、今日の自分がちゃんと理解できるか」という視点で聞くのも、非常に有効な方法です。
家庭教師とのコラボ動画も
もし家庭教師が協力してくれるようであれば、一緒に「ミニ授業動画」を撮ってみるのも面白い試みです。たとえば、次のような流れで進められます。

今日は僕が英語の過去形について教えます。

はい、お願いします。

まず、過去形っていうのは……
このような活動は、学習に対するモチベーションを高めてくれるだけでなく、「教えること」による理解の深まりを実感できる良い機会になります。
まとめ
家庭内での相互教育法は、特別な道具や時間を用意しなくても始めることができます。兄弟や親とちょっと話す時間をつくったり、家庭教師との学びをもう一度説明したり、スマホで自分の声を記録したりするだけでも、「教えることによる学び」は実現できます。
誰かに話すことで、頭の中が整理され、自分がどこまで理解しているのかを確認できます。そして、説明しようとすることで、自然と深く考える力が育っていきます。
家庭は、安心して失敗できる場所です。間違えても大丈夫。説明してみることで「もっと知りたい」「ちゃんと伝えたい」という気持ちが生まれます。そんな気持ちを育てることこそが、相互教育法の最大の力なのです。
こんな子におすすめ!家庭教師×相互教育法
相互教育法(Peer Teaching)は、誰にでも効果がある学習法ですが、とくに向いているタイプの人がいます。この章では、どんなタイプの生徒さんに「家庭教師×相互教育法」がぴったりなのかを紹介しながら、それぞれの特徴や、効果的な使い方について詳しく説明していきます。
理解はできているけど記憶に残らないタイプ
頭ではわかるのに、すぐに忘れてしまう?
勉強していると、「この内容、説明を聞けばわかるんだけど、テストのときには思い出せない……」ということはありませんか?こうしたタイプの人は、「理解」はしていても「記憶」に定着していないことが多いです。
たとえば、理科の授業で「光の反射」について習ったとき、先生の説明を聞いたときは「なるほど!」と思ったのに、いざテストで「鏡に当たった光はどこに進む?」と聞かれると、頭が真っ白になってしまうようなケースです。
なぜ「教えること」が記憶を助けるのか
こういうときこそ、相互教育法が役立ちます。誰かに「教える」ためには、まず自分の中で情報をしっかり整理しなくてはなりません。言いかえると、「どこが大事なのか」「どう説明したらわかりやすいか」と考えることが、頭の中に記憶をしっかり残す手助けになるのです。
実際、教育心理学の研究でも、「学んだことを人に教えるつもりで学習すると、記憶の定着率が高まる」といわれています。
家庭教師と「記憶に残す」ための実践例
たとえば、家庭教師の先生との授業のあとに、「今日の内容を5分で説明してみよう」という時間をとります。先生を「生徒役」として、自分が先生になって今日のポイントを話してみるのです。
初めのうちはうまくいかなくてもかまいません。大切なのは、「説明しようとすることで頭が整理される」ということです。
また、説明したあとに、家庭教師から「じゃあ、なんでこの答えになるの?」「この部分はどう考えたの?」と質問してもらうことで、より深く内容を理解できるようになります。
このようにして、「わかったつもり」を「本当に覚えた!」に変えていくことができます。
人に説明するのが好き・話すと整理できる子
おしゃべり好き=学び上手?
人と話すのが好きなタイプや、「自分の考えを口に出すとスッキリする」という子は、相互教育法にとても向いています。とくに、話しながら「あ、そういうことか!」と気づくことが多い人は、「説明すること」で学びが深まるタイプです。
たとえば、社会の授業で「江戸幕府の三大改革」について学んだとします。家に帰って、「ねえ、松平定信って知ってる?寛政の改革をやった人でね……」と親に話してみると、話しているうちに、「あれ?じゃあ田沼意次っていつの人だっけ?」と疑問が出てきたり、自分の中で順番が整理されたりします。
このような「話しながら気づく」力を持っている子にとって、「家庭教師に教える時間」はまさに最高の学習法になります。
家庭教師を「話し相手」にするという学習法
家庭教師との授業のあと、「じゃあ、今日やった内容、先生に説明してみてくれる?」と言われたらどうでしょう。話すのが好きな人なら、「うん、やってみる!」と楽しみながら取り組めるはずです。
また、「この考え方って、なんか他の問題にも使えそうだよね」と、自分なりの視点で話せるようになってくると、それは学習が「自分のもの」になってきている証拠です。
さらに、話しながら理解が深まるタイプの人は、「図にまとめて説明する」「ノートに話した内容を書き出してみる」などの工夫を取り入れると、学習効果がぐんと高まります。
家庭教師の先生に、「話しながら覚えたいタイプなんです」と伝えれば、きっとその特徴に合った指導をしてくれるでしょう。
家庭教師との関係が対話型になってきた子
教わるだけの関係から、一緒に考える関係へ
家庭教師と何回か授業を重ねていると、ただ説明を聞いているだけでなく、「これってこう考えていいですか?」「さっきの問題、こうやると違う答えになるんですけど……」と、だんだん会話が増えてくることがあります。
このように、「自分の意見を言えるようになってきた」「先生とやりとりするのが楽しい」と感じるようになってきた子は、まさに相互教育法にぴったりの段階にいます。
「教える⇔教わる」が入れかわる関係性
相互教育法は、「先生がずっと教えて、生徒は聞いているだけ」という学習スタイルではうまくいきません。大切なのは、「教える⇔教わる」という関係が、その場その場で入れかわることです。
たとえば、数学の問題を一緒に解いていて、家庭教師が「このやり方もあるけど、他に考えられる方法ある?」と聞いてくる場面があります。そんなとき、自分から「私はこうやってみました」と答えられるようになると、その瞬間、自分が「教える側」に立っているわけです。
また、「どうしてその式になるの?」と逆に質問されることで、自分の考えをしっかり伝える練習にもなります。
このような「対話のキャッチボール」が自然にできるようになってきたら、家庭教師との関係は、すでに「学びのパートナー」になっています。
家庭教師にお願いしてみよう
もし、生徒さんが「先生との会話が増えてきたな」「なんだか授業が楽しい」と感じているなら、思いきって家庭教師にこうお願いしてみてください。
「教えてもらった内容を、次回、自分が説明してみたいです」
たったこれだけで、家庭教師はあなたの学び方にあわせた指導をしてくれるはずです。そして、その一歩が、「わかる」から「できる」、さらには「教えられる」への大きな成長につながるのです。
まとめ
この章では、「家庭教師×相互教育法」がとくに効果を発揮する3つのタイプの子について紹介しました。
- 理解はできているけど記憶に残らないタイプ:教えることで頭に残る。
- 人に説明するのが好き・話すと整理できる子:話すことで理解が深まる。
- 家庭教師との関係が対話型になってきた子:学び合いの準備が整っている。
どれか1つでも当てはまると感じたら、ぜひ「家庭教師に教える」という新しい学び方にチャレンジしてみてください。最初はうまくいかなくても大丈夫。家庭教師は、あなたの成長をサポートする心強い味方です。
よくある疑問と対処法
まだちゃんと理解してないのに教えられるの?
教えながら理解が深まるしくみ
「自分はまだ完ぺきに理解できていないから、誰かに教えるなんてムリ」と思う人は多いかもしれません。でも、実はその考えこそが「教えることの効果」を正しくとらえていないのです。相互教育法(Peer Teaching)では、「教えること」そのものが学びの一部だと考えられています。つまり、教えることによって、自分の理解がより深くなるのです。
たとえば、生徒さんが理科の「光の反射」の単元を勉強しているとしましょう。先生や家庭教師から説明を受けたあとに、「光はどんな角度で反射するか説明してみて」と言われたとします。そのとき、生徒さんは頭の中で学んだ内容を整理し、「入射角と反射角は同じなんだよ」と言葉にします。この「言葉にする作業」こそが、学びを定着させる大切なプロセスなのです。
説明しようとすることで、自分が「どこまで理解できているのか」「どこがまだあいまいなのか」が見えてきます。これは「メタ認知」と呼ばれる力で、学習においてとても重要なものです。まだよくわかっていないからこそ、教えることで整理でき、理解が深まるのです。
小学生や中高生でも効果はあるの?
もちろんあります。たとえば、英語の単語を覚えるとき、ただ何回も書いて暗記するのではなく、誰かに「この単語の意味は○○だよ」「こんなふうに使うんだよ」と説明してみると、記憶に残りやすくなります。国語の文章読解でも、問題の答えを出したあとに、「どうしてその答えになったのか」を説明することで、論理的な考え方が身につきます。
勉強が苦手な子ほど、「教えることなんてムリ」と思いがちですが、実はその子たちにこそ相互教育法は効果的なのです。理解が浅いからこそ、教える練習をする中で理解が進んでいきます。
すぐにできることから始めよう
「教える」と聞くと、難しそうに感じるかもしれませんが、まずはとても簡単なことから始められます。たとえば、今日学んだことを1分だけ誰かに話してみる。家庭教師に「ここってこういう意味だよね?」と確認するつもりで説明してみる。それだけでも、学びは大きく変わります。
「まだわからないから教えられない」と思って立ち止まるのではなく、「説明してみることで理解が進むんだ」と考えて、少しずつチャレンジしてみてください。
間違ったことを教えたらどうなる?
間違いはむしろチャンスになる
「もし自分が間違ったことを教えてしまったら、相手に迷惑をかけるのでは?」という心配もよくあります。でも、相互教育法では、間違いをすることを「悪いこと」とは考えません。むしろ、間違えることは学ぶチャンスなのです。
たとえば、算数のわり算の問題を誰かに説明しているとき、自分の説明に対して家庭教師が「そこ、少し違うね」とやさしく指摘してくれる場面を想像してみてください。その瞬間、「どこが違っていたのか」「なぜ間違えたのか」を深く考えることになります。このプロセスが、ただ答えを暗記するだけの学習よりも、ずっと深い理解につながります。
間違いを指摘してもらえる環境の大切さ
家庭教師がいる環境は、間違いを恐れずチャレンジできる、非常に良い場所です。なぜなら、あなたが説明した内容が間違っていたとしても、その場で正しく直してくれる人がすぐ近くにいるからです。学校の授業では、全員の前で間違えることを恥ずかしく感じることもあるかもしれませんが、家庭教師との1対1のやりとりなら安心して話すことができます。
また、家庭教師は「教えるプロ」です。生徒さんが間違えたときも、否定するのではなく、「なるほど、そこはこう考えるともっとわかりやすいよ」とやさしく導いてくれるでしょう。だからこそ、安心して「教える役割」にチャレンジできるのです。
間違えたあとが大事
大切なのは、間違えたときに「恥ずかしい」と思って終わりにせず、「なぜ間違えたのか」をふり返ることです。たとえば、「公式を間違えて覚えていた」「言葉の意味を勘違いしていた」と気づけたら、それはすばらしい学びです。
自分の説明を家庭教師が聞いてくれて、必要に応じてすぐ修正してくれる。そんな「安心して間違えられる環境」が、家庭教師との相互教育法の最大の強みなのです。
家庭教師に失礼じゃない?
教える側・教わる側の関係を考え直そう
「先生に向かって教えるなんて、おこがましいことじゃないの?」「家庭教師に説明するなんて、なんだか失礼じゃない?」という声も聞こえてきそうです。でも、ここで大切なのは、「教える」という行為が、相手を見下すことではない、ということです。
家庭教師は、「生徒さんの学びを深めるために、どんな方法が効果的か」を考えてくれる存在です。だからこそ、「生徒さんが説明する」という方法が学びに役立つとわかれば、むしろ喜んでその役割を引き受けてくれます。
たとえば、ある中学生の生徒が、歴史の授業で習った「鎌倉幕府の仕組み」について、家庭教師に向かって「鎌倉時代には、幕府が朝廷と力を分け合っていたんだよ」と説明したとします。そのとき、家庭教師は「そうだね、じゃあその中で執権の役割はどうだったかな?」と返してくれるでしょう。これは「生徒が先生を試している」のではなく、「一緒に学びを深めている」やりとりなのです。
プロの家庭教師ほど「教えさせる」ことを大切にする
実は、優れた家庭教師ほど、「教え込む」のではなく「教えさせる」ことの大切さを知っています。なぜなら、生徒が自分の言葉で説明することで、その理解の深さやつまずいている部分がよく見えてくるからです。
たとえば、英語の「現在完了形」について、「have+過去分詞ってどういう意味?」と家庭教師が質問してくれたとします。生徒さんが「今までに何回もやったことがある、っていう意味になるんだよ」と説明すれば、家庭教師は「なるほど、それなら『I have seen that movie three times.』って文はどんな意味になる?」と会話を広げてくれます。
こうしたやりとりは、対等な学びのパートナーとしての信頼関係があるからこそ生まれるものです。
学び合いの関係は、信頼から始まる
相互教育法では、「生徒が家庭教師に説明すること」も、信頼に基づいた学びの一部です。失礼どころか、相手を信頼しているからこそ、「自分の理解を伝えて、確認してもらいたい」と思えるのです。そして、家庭教師もあなたの成長を心から願っているので、そのプロセスを応援してくれるでしょう。
まとめると、「教えることで学ぶ」という相互教育法の考え方は、中学生でも十分に実践できるものであり、家庭教師との関係の中で安心して取り入れられる学習法です。わからない部分があっても、間違っても大丈夫。信頼できる家庭教師と一緒に、「教え合う学び」を楽しんでみてください。
今日からできる!実践ステップ
まずは5分だけ「教えてみる」時間をつくる
「教えてみる」ことが学習になる
「勉強って、覚えることじゃないの?」と思っている人も多いと思います。もちろん、知識を頭に入れることは大切です。でも実は、「教えてみる」こともすごく効果のある学び方なのです。
たとえば、学校の授業で先生が黒板を使って説明するのを見たことがあるでしょう。あの先生たちも、授業の前にたくさん準備をして「どうやったらわかりやすく伝わるかな」と考えながら教えています。そして、先生自身も「教えることで」内容をより深く理解しているのです。
これは私たち生徒にもあてはまります。自分が学んだことを誰かに教えようとすると、「どこが大切なんだろう?」「どう説明すれば伝わるかな?」と考えます。そのとき、自然と頭の中で知識を整理し、自分の中でもっとしっかり理解できるようになるのです。
「5分だけ」からスタートしてみよう
でも、いきなり誰かに教えるのはハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。そこでおすすめなのが、「まずは5分だけ教えてみる」というやり方です。
たとえば、家庭教師との授業が終わったあとに、「今日習った内容を5分でまとめて話してみる」時間を作ってみましょう。相手は家庭教師でもいいですし、兄弟や親に聞いてもらっても構いません。
最初はうまく話せないこともあるでしょう。「どう言えば伝わるのかな」と迷うこともあるかもしれません。でも、それでいいのです。大切なのは「完ぺきに教えること」ではなく、「説明しようとすること」。その過程こそが、あなたの理解を深めてくれるのです。
実際にやってみた中学生の声
中学2年生のミオさんは、英語の文法がなかなか覚えられずに困っていました。家庭教師の先生にすすめられて、「授業のあとに、5分だけ今日の内容を説明する時間」を作るようにしました。最初はドキドキしていたそうですが、だんだん慣れてきて、「どう説明すればいいか」を考えるうちに文法のルールが頭に入るようになったと言います。
このように、「教えること」で自分の理解が深まる体験は、多くの生徒に共通しています。ぜひ、あなたも今日から「5分だけ教える」時間を始めてみてください。
学んだことを図にして説明してみる
言葉だけじゃなく「図」で伝える力
人に何かを説明するとき、「言葉」だけでなく「図」や「絵」を使うと、とてもわかりやすくなります。これは「デュアルコーディング理論」といって、言葉と視覚の両方で情報を伝えると、記憶にも残りやすくなるという考え方に基づいています。
たとえば、社会の地理の授業で「火山の仕組み」を学んだとします。口で「マグマが地中から上がってきて…」と説明するのもいいですが、マグマが地中にたまっている様子や、火山の形を図にして説明すると、聞いている人もイメージがしやすくなります。そして、自分自身も「どこがどうつながっているのか」が整理されて、より深く理解できます。
ノートに図を書いて説明してみよう
家庭教師との勉強中や勉強後に、「図で説明してみよう!」と意識して取り組んでみてください。たとえば、次のような場面が考えられます。
- 理科:細胞の構造を図にして、それぞれの名前と役割を説明する。
- 数学:一次関数のグラフを描いて、変化の割合を説明する。
- 英語:英文の構造を図にして、主語・動詞・目的語を示す。
「図を描く」ことは、頭の中のイメージを外に出す作業です。これは、相手への説明だけでなく、自分の思考の整理にもなります。
図で説明するのが得意な子の例
中学3年生のダイキくんは、理科が得意な一方で国語が苦手でした。でも、家庭教師との授業で「理科の内容を図で説明する」という練習を続けているうちに、「国語の文章も、図にして整理できるんじゃないか」と気づいたのです。
そこで、物語文の登場人物の関係を図にしたり、説明文の構成を図にまとめたりするうちに、文章の読み方も少しずつ上達していきました。
このように、「図にする力」はいろいろな教科で使える、強力な学習の道具なのです。
家庭教師と一緒に「ミニ授業タイム」をつくる
「先生になる時間」をもつことで見える世界
ここでは、ちょっと特別な学習法を紹介します。それは、「家庭教師と一緒にミニ授業タイムを作る」というものです。どういうことかというと、学習の終わりに「自分が先生になって、家庭教師に授業をしてみる」のです。
「え、家庭教師の先生に教えるなんて、無理だよ!」と思うかもしれません。でも心配はいりません。家庭教師はプロですから、間違ったところがあっても、ちゃんとフォローしてくれます。そして、生徒さんが「どう説明しようとしているのか」をしっかり見てくれます。
この「先生になる時間」をもつことで、自分がどこまで理解しているのか、どこがまだあいまいなのかがはっきり見えるようになります。
ミニ授業の作り方とコツ
では、実際にどうやってミニ授業を行えばよいのでしょうか。ポイントをいくつか紹介します。
- テーマをしぼる
たとえば、「一次関数のグラフの書き方」など、1つのテーマにしぼって説明します。 - 紙にまとめてみる
説明する内容を紙に書き出し、図やポイントを整理しておくと、話しやすくなります。 - 声に出して話してみる
家庭教師を相手に、実際に声に出して説明してみましょう。途中でわからなくなっても大丈夫。考えながら進めることが大切です。 - 最後にフィードバックをもらう
家庭教師に、「どこがよかったか」「どこがもう少し工夫できそうか」を教えてもらいましょう。
実際にミニ授業をしている生徒の声
中学1年生のカナさんは、国語の文法が苦手でした。そこで家庭教師と一緒に、「文の種類について自分が教える」というミニ授業をしてみました。最初は間違えてしまったところもありましたが、先生がやさしく修正してくれたことで、「あ、ここが間違いやすいんだな」と気づき、自分でもより深く理解できるようになったのです。
このように、ミニ授業は「自分の学びを人に伝える体験」ができる、とてもよい方法です。
おわりに:小さな一歩から、大きな学びへ
この章では、「今日からできる相互教育法の実践ステップ」を紹介してきました。
- まずは5分だけ、今日学んだことを説明してみる。
- ノートや紙に図を書いて、自分の考えを整理する。
- 家庭教師と一緒に「先生の立場」を体験してみる。
こうした小さなステップを積み重ねることで、生徒さんの理解力、伝える力、自信がぐんぐん伸びていきます。教えることは、自分自身の学びにもなるのです。
「うまくできなかったらどうしよう」「説明が下手だったら恥ずかしい」──そんな気持ちがあるのも当然です。でも、失敗をおそれずに一歩踏み出せば、きっと新しい世界が見えてきます。
まずは今日から、5分間の「教えるチャレンジ」から始めてみてください。それが、あなたの学力を大きく伸ばす第一歩になるはずです。
まとめ――相互教育法で学びが変わる
相互教育法は家庭教師との学習にも使える
相互教育法とは何か
「相互教育法(Peer Teaching)」とは、簡単に言えば、「教え合いながら学ぶ方法」です。これは、同じ立場にある人どうしが、おたがいに知っていることや理解したことを教え合うことで、学びを深めていくやり方です。
たとえば、学校の授業で「この問題の解き方、教えてあげるよ」と友だちに説明したことがある人は、それだけで「相互教育法」を体験したことになります。逆に、「あ、この前の授業で出てきた漢字、どうやって書くんだっけ?」と聞いて、友だちに教えてもらった経験もあるでしょう。
このように、「一方的に教えられる」のではなく、「おたがいに教え合う」ことで、知識や理解がより確かなものになるのが、相互教育法の大きな特徴です。
家庭教師との学習にもぴったり
この相互教育法は、家庭教師との学習にもとてもよく合います。なぜなら、家庭教師はただ「教える人」ではなく、「一緒に考えてくれる人」だからです。
たとえば、ある中学2年生の男子生徒は、数学の関数の単元でなかなか理解が進みませんでした。そこで家庭教師の先生に「この問題、ぼくが説明してみていい?」と申し出て、自分なりに考えた解き方を伝えてみました。先生はその説明をじっくり聞きながら、「なるほど、それもひとつの考え方だね」とフィードバックをくれました。
このように、「生徒が先生に説明する」という形を取り入れることで、家庭教師との関係が一方通行ではなく、対話的で生き生きとした学びに変わります。生徒自身も「わかったつもり」が「ほんとうにわかった」に変わっていくのです。
教えることで理解が深まり、学習がアクティブになる
なぜ「教えるとわかる」のか
「人に教えると、自分もよくわかるようになる」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは実際に多くの研究でも確かめられています。
人に説明しようとすると、まず自分の中で「どう言えば伝わるか」「何がポイントか」を考える必要があります。そのとき、頭の中では自然と情報を整理し、つながりを見つけようとします。すると、ただ聞いたり読んだりしただけの知識よりも、はるかに深く記憶に残るようになるのです。
たとえば、社会の歴史の授業で「明治時代の改革」について学んだとします。ただノートを見て暗記するだけでは、すぐに忘れてしまうかもしれません。でも、「明治政府はどうしてこんな改革をしたんだろう?」と考えながら、誰かに説明するつもりで内容を整理すると、「あ、こうつながっていたのか!」と新しい気づきが生まれます。
学びが「受け身」から「アクティブ」に変わる
学校や塾の勉強では、先生の話を聞いたり、テキストを読んだりする「受け身の学び」が中心になりがちです。しかし、相互教育法を取り入れると、学びが「受け身」ではなく「アクティブ」になります。
「アクティブ」とは、「自分から動く」「積極的に関わる」という意味です。相互教育法では、相手に教えるために自分で調べたり、工夫して説明のしかたを考えたりします。こうしたプロセスを通して、学びがどんどん深くなっていくのです。
中学3年生のユウタくんは、理科の天体の分野が苦手でした。でも、家庭教師の先生にすすめられて、「地球の公転と自転の違い」を図にして説明する練習をしました。何度も説明していくうちに、自分でも「なるほど、こういうことだったのか!」と理解が進み、ついにはクラスの友だちにわかりやすく教えられるようになったそうです。
このように、「教える」経験を通して、学びはもっと面白く、積極的なものに変わっていきます。
家庭教師との関係性を少し変えるだけで学びが広がる
家庭教師=「先生」ではなく「学びのパートナー」
家庭教師と聞くと、「教える側」と「教えられる側」という関係をイメージする人が多いかもしれません。もちろん、家庭教師は知識が豊富で、いろいろなことを教えてくれる存在です。でも、相互教育法を取り入れると、その関係性が少し変わります。
家庭教師は、生徒さんの「学びのパートナー」になります。一緒に考えたり、説明を聞いてくれたり、ときにはわざと間違ったふりをして「それ、ちがうよ!」とあなたがツッコめるようにしたりもできます。
このように、家庭教師と一緒に「対話」を重ねながら学ぶことで、勉強は単なる知識のつめこみではなく、「ことばのキャッチボール」や「考えを育てる時間」になります。
小さな変化が、大きなやる気につながる
実際、「家庭教師の先生ともっと話しながら学ぶようになったら、勉強が前より好きになった」という声は少なくありません。
中学1年生のサラさんは、数学の文章題が苦手でした。でも、先生に「どうやってこの問題を解いたの?」と説明してみるように言われて、くり返し練習しました。そのうちに、「あ、自分でも説明できるようになってきた」と感じ、勉強に対する自信が少しずつわいてきました。
ほんの小さな変化かもしれませんが、こうした成功体験の積み重ねが、やる気や自己肯定感(=自分を信じる気持ち)につながっていきます。
家庭教師との学びに相互教育法を取り入れることで、生徒さんの「学ぶ力」はきっと大きく広がっていきます。
相互教育法のこれからの可能性
家庭でも学校でも活かせる学び方
相互教育法は、家庭教師との時間だけでなく、家庭の中や学校でも活用できます。たとえば、兄弟どうしで「今日の授業で習ったことを5分だけ説明し合う」だけでも十分ですし、学校のグループ学習のときに「説明役」をしてみることも立派な相互教育です。
この学び方は、これからの社会でもとても役に立つと言われています。なぜなら、将来の仕事や人間関係では、「人と協力して考える力」「自分の意見をわかりやすく伝える力」がとても大切だからです。
相互教育法で学んだ経験は、そうした力を育てる土台にもなるのです。
「教える」ことは、学びの最高のステップ
最後に、ひとつ大切なことをお伝えします。
「教えること」は、学びの中でもっとも高度なステップだと言われています。わからないことを理解するのは第一歩。それを説明し、他の人に伝えられるようになるのは、さらに深い理解の証(あかし)です。
相互教育法は、あなたをそのレベルへと導いてくれる、とても力強い学びの方法です。
まとめ
この章では、相互教育法と家庭教師との学習について、改めてふり返ってきました。
- 相互教育法は、「教え合う」ことで理解を深める学習法です。
- 家庭教師との学びの中にも、この方法を取り入れることができます。
- 教えることで学びがアクティブになり、自信ややる気も育ちます。
- 家庭教師を「一緒に学ぶパートナー」としてとらえることで、勉強の楽しさが広がります。
今日から、ぜひ「教える学び」を始めてみてください。あなたの中に眠っている「伝える力」が、きっと目を覚まします。そして、それはあなたの学力だけでなく、未来への力にもなっていくでしょう。